2018 Fiscal Year Annual Research Report
英語習得段階・目的を考慮した教授・学習用例文の満たすべき条件とは
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18J15382
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Research Fellow |
川本 渚凡 東京外国語大学, 総合国際学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 例文選定 / 例文難易度 / 難易度決定要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は学習材の最も基礎的な要素である「用例」に焦点を絞って,①学習段階を考慮した最適な用例の条件とその条件の重み付け構造を明らかにしモデル化すると共に,②CEFRレベル別言語タスクに組み込めるような最適用例の作成方法と ③その具体的な用例セットの試作と ④評価を行うことであった。 これまで事前調査として行ってきた辞書用例の最適条件分析からより一般的な教授・学習用例文の研究に拡張するためには難易度に寄与する要因の更なる特定と要因間の相互関係や重み付けの解明が必要であったため、平成30年度は、① 既存の教材を用いた例文難易度の決定要因のさらなる調査と特定、② 学習レベル、技能 、言語を使用する場面・言語が持つ機能・内容などの言語タスクと必要な例文の関係性の特定と考察を進めた。 具体的には①では、CEFR Coursebook Corpusより、各技能・各レベルの例文をそれぞれ150例文、ランダム抽出・半ランダム抽出を行い、抽出された例文に、(1) 用例の長さ、(2) 平均語彙難易度レベル、(3) あるCEFRレベルの語彙が例文中に占める割合、などの情報を付与し、これらの中のどの変数がレベル調整に寄与しているのか調査することで、既存の学習教材における例文の難易度決定要因、またその技能ごとの決定要因の探索を試みた。②においては、モノリンガル辞書 (英英辞典 vs. 活用辞典)とバイリンガル辞書 (和英辞典vs. 英和辞典) の比較研究を通して、(1) 受信用用例と発信用用例との間にどのような言語的特徴の違いがあるのか、(2) 受信用用例と発信用用例を区別する上でモノリンガル辞書とバイリンガル辞書の間に違いがあるのかを明らかにしようと試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① 既存の教材を用いた例文難易度の決定要因のさらなる調査と特定、② 学習レベル、技能 、言語を使用する場面・言語が持つ機能・内容などの言語タスクと必要な例文の関係性の特定と考察を進めることを予定としていた。例文難易度の決定要因を探索するという計画をを具体化させ、研究業績の概要で先述の通り、(1)ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)に基づく英語コースブックの例文分析を行い、CEFRレベル別の例文の言語特徴のうち例文の長さと例文中の使用語彙難易度の関係を探った。また、(2) 英語辞典における発信用例文と受信用例文の区別に着目し、例文の長さ、句例か文例か、用例中で使用されている語彙の難易度、などの関係を統計的に探った。しかし、複数の研究限界もあった。リーダビリティー研究や、自然言語処理、Computational Linguisticsの分野では、例文の難易度指標として、統語的複雑性に関わる指標を含めているが、研究①と②では、統語的な特徴に関する指標は含めていない。また、方法論的問題点として、Coursebook Corpusからのランダム抽出によって得た調査対象の例文は、必ずしも各CEFRレベル (A1-C2レベル)を代表する例文ではないこと、既存の教材において、その例文がどのような用途・目的で提示されているものなのかについての情報を加味していないことが挙げられる。複数の限界があるとはいえ、今後の研究につながるような方法論的問題点の発見ができた。また、今後の研究の見通しがたち、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上記で述べた2つの研究から得られた方法論的問題点の改善を行い、例文の難易度調整に寄与する変数の更なる洗い出しを行う必要がある。また、今後は、③のCEFRレベル別言語タスクに組み込めるような最適用例の具体的な用例セットの試作と④その用例の評価を主に行う。CAN-DOの内容を言語機能・場面に紐づけ、当該レベルの言語タスクに連携した語彙・文法を提示する用例セットにまで具体化することを目標としている。具体的な効果検証実験として、熟達度が異なる日本人英語学習者を対象に、1年目で明らかになった難易度調整済み用例、難易度調整が行われていない用例を与え、その用例を用いたタスクに従事した場合に、用例の違いや使用方法などによりタスクの出来具合いに違いが見られるかを検証する。観察や実験を組み合わせて、大規模に行い、客観的な指標を用いて難易度を調整された用例を提供することの効果を検証することを予定している。
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Research Products
(4 results)