2018 Fiscal Year Annual Research Report
微小プラズマと微小液滴を融合したナノ粒子生成:微小反応場の特異性の解明
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18J15442
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
岡本 拓也 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / エマルション / フェムト秒レーザー / 微小液滴 / プラズマ / 界面 / マイクロ流路 / 粒径制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、微小反応場におけるナノ粒子の生成、成長、そして凝集について基礎的な知見を得ることを目的としている。還元剤や界面活性剤などの添加剤による系の複雑化を避け、フェムト秒レーザーによって微小プラズマを微小液滴内に発生させることでナノ粒子の生成を行う。まずは、金属錯体の溶液試料と貧溶媒の2相溶液を撹拌することでエマルション化して簡便に液滴を生成した。本年度は、主に金属錯体溶液試料/貧溶媒の撹拌により形成したエマルション試料へのレーザー照射によるナノ粒子生成について研究活動を行った。フェロセンヘキサン溶液/水、およびヘキサン/塩化金酸水溶液の撹拌により水中油滴型のエマルションを形成し、フェムト秒レーザーを照射した。フェロセンヘキサン溶液/水では有機相に原料分子が溶解しているにもかかわらず、水相に10 nm未満の鉄ナノ粒子が分散して得られることを見出した。また、均一溶液のみを試料とした場合の問題点であった炭素凝集体の除去に成功した。微小油滴内で核生成することで粒子成長が抑制され、液液界面によって炭素凝集体と鉄ナノ粒子が分離されると結論した。一方、ヘキサン/塩化金酸水溶液では、均一溶液のみを試料とした場合に比べて短時間で10 nm未満の金ナノ粒子が支配的なコロイドを生成することに成功した。さらに、透過型電子顕微鏡観察によって粒子は濃縮されつつも凝集しないことが分かった。ヘキサン液滴の導入により金ナノ粒子の核が液液界面に捕捉され、粒子成長が抑制されると結論した。微小液滴を用いたナノ粒子生成では、液滴の内部だけでなく、液滴表面(界面)も粒子生成・成長に影響を及ぼすことが明らかとなった。この成果はフランスのリヨンで開かれた国際会議にて口頭発表した。なお、この発表に基づいた論文を現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、生成される粒子の形態と粒径分布に反応場のサイズが与える影響を明らかにすることを目的としている。そのため、マイクロ流路によってサイズを制御した微小液滴内にレーザー誘起の微小プラズマを発生させることによりナノ粒子生成を行う予定であった。当初は石英ガラス製のマイクロ流路を用いて研究を行う予定であったが、石英ガラス製では所望の性能の流路の購入だけでなく作製も困難であった。そのため、現在は1. 市販のシリコン樹脂製マイクロ流路による液滴の生成およびサイズ制御条件の決定と2. 石英ガラス板表面に流路の溝を加工し、シリコン樹脂の板を貼り合わせることによる独自のマイクロ流路の作製の2つを同時並行して進めている。ここで、シリコン樹脂はヘキサンによって膨潤してしまうためヘキサンの代わりにシリコン樹脂への影響がないヘキサデカンを有機溶媒に採用した。現在、液滴制御条件の検討を市販のシリコン樹脂製マイクロ流路によって行い、サイズを制御した微小液滴へのレーザー照射を可能にするためマイクロ流路-顕微鏡の実験系を製作中である。以上より、研究計画を大幅に変更させることなく、マイクロ流路によるサイズを制御した液滴生成の方針を確立できたため研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、生成される粒子の形態と粒径分布に反応場のサイズが与える影響を明らかにする。まずは、現在執筆中のヘキサン/塩化金酸水溶液へのレーザー照射に関する結果を学術論文誌へ投稿する。フェロセンヘキサデカン溶液/水、およびヘキサデカン/塩化金酸水溶液の2種の試料についてマイクロ流路による液滴サイズの制御条件を決定する。サイズを制御した液滴試料にフェムト秒レーザーを集光する。これと同時にヘキサデカン/塩化金酸水溶液の試料について単一液滴内におけるナノ粒子成長過程のその場分析に挑戦する。研究室に現有する分光器、ICCD検出器、CWレーザーを用いて顕微ラマン分光装置を構築する。ヘキサデカンを貧溶媒としたマイクロ流路内で塩化金酸水溶液の単一液滴へのレーザー照射により粒子を生成する。同時にCWレーザーを光源とした、顕微ラマン分光によって単一微小液滴における金ナノ粒子の生成、成長、凝集過程を追跡する。得られた実験成果をまとめ、学術論文誌に投稿するほか、国内外の学会にて報告する予定である。
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Research Products
(8 results)