2018 Fiscal Year Annual Research Report
Identification of mammalian phosphatidylcholine-specific phospholipase C
Project/Area Number |
18J20003
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
村上 千明 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 脂質 / シグナル伝達 / ジアシルグリセロール / ホスファチジン酸 / ジアシルグリセロールキナーゼ / スフィンゴミエリン合成酵素 / Sterile alpha motif (SAM) domain / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
II型糖尿病患者の骨格筋でのジアシルグリセロール(DG)キナーゼδ(DGKδ)の発現低下は本症増悪化の重要な決定因子である.そこで,本研究ではDGKδの関わる脂質代謝を解明するために,DGKδにDGを供給する上流経路の解明を目的とした.2018年度は主に下記の3つの成果が得られた. 1. DGKδはDG産生酵素の一種であるスフィンゴミエリン合成酵素 (SMS) 関連タンパク質 (SMSr) と相互作用することを示した.2. DGKδとSMSrの相互作用は,主に両者が有するオリゴマー形成モジュールのsterile α motif (SAM) domain同士のヘテロオリゴマー形成によるものである.3. DGKδとSMSrの機能的な連関を調べたところ,相互作用を介してDGKδとSMSrが機能的に連関して,SMSrはDGKδによるPA産生を制御していることが強く示唆された. 上記の結果から,SMSrはDGKδの上流経路として機能することが示唆された. また,本研究の遂行の過程で,以前我々が報告した液体クロマトグラフィー/質量分析法 (LC/MS) を測定基盤とする生理活性脂質DG定量法の感度および分離条件を改良するために,液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法 (LC-MS/MS)を測定基盤とする新たな測定条件を構築した.本法は以前報告した定量法と比較して,1. DGの検出を阻害する生体膜主要成分ホスファチジルコリンとDGの分離度 (R) が7.2 倍優れ (4.82 対 0.67), 2. DGの検出下限は54倍優れ (11 fmol 対 600 fmol), 3. 特定化学物質に指定されているクロロホルムの使用量の25%の削減に成功した.以上より,本法の開発はDGの検出感度の改善のみならず,グリーンケミストリーの観点からも新規性と進歩性を有する測定法であると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は,DGKδの上流経路の候補としてホスファチジルコリン特異的ホスホリパーゼC (PC-PLC) を報告していたが,本研究では新たにSMSrがDGKδの上流経路として機能することを発見した.また,我々はDGKδのSAM domainはホモオリゴマーを形成し,DGKδの細胞内局在を調整することを報告していたが,他のタンパク質のSAM domainと相互作用するという報告は今までになかった. さらに,今年度は以前開発した生理活性脂質のDG定量法の改良も完了ている. したがって,今年度は上述の新たな成果が得られ,新たなDG定量法の確立によって,本研究の研究基盤は整った.以上より,当初計画と比較してもおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初計画として,DGKδの上流経路の候補である,活性発見後37年間分子実体不明のホスファチジルコリン特異的ホスホリパーゼCの同定を計画していた.しかし,興味深いことに,新たなDGKδの上流の候補としてSMSrを同定した.そこで,当初計画を修正し,次年度は下記の実験を実施することで研究を推進する予定である. 1. SMSrがPC-PLC活性を有する可能性も含めて,SMSrの酵素学的性質について検討する.具体的にはヒトSMSrを精製し,in vitroでPC-PLC活性があるのか否かを,開発したDG定量法を用いて検証する. 2. SMSrとDGKδの機能的な関連性をより詳細に検討していく.具体的にはSMSrとDGKδの複合体形成が両者の酵素活性に影響するのか否かを,精製したSMSrとDGKδを用いてin vitroでDGKおよびSMSr活性を測定することで検証する.また,細胞レベルにおいての影響の評価として,重水素標識したパルミチン酸を用いてSMSrとDGKδを過剰発現させた細胞中の脂質代謝を調べることを計画している. 3. SAM domainの複合体の形成について詳細に調べることを計画している.具体的には精製したSMSrとDGKδのSAM domainを in vitroで複合体を形成させ,Blue Native PAGEやゲルろ過クロマトグラフィーなどで複合体の推定分子量を計算することで,SMSrとDGKδのSAM domainのヘテロオリゴマーの化学量論比を調べる.
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Research Products
(16 results)