2019 Fiscal Year Annual Research Report
Identification of mammalian phosphatidylcholine-specific phospholipase C
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18J20003
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
村上 千明 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / 脂質 / 2型糖尿病 / ジアシルグリセロール / ホスファチジン酸 / スフィンゴミエリン合成酵素 / ジアシルグリセロールキナーゼ / ヘテロダイマー |
Outline of Annual Research Achievements |
2型糖尿病患者の骨格筋でのジアシルグリセロール(DG)キナーゼδ(DGKδ)の発現低下は本症増悪化の重要な決定因子である.本研究ではDGKδの関わる脂質代謝を解明するために,DGKδにDGを供給する上流経路の解明を目的とした.前年度は,DGKδのオリゴマー形成モジュールのsterile α motif domain (SAMD)に注目し,DGKδはDG産生酵素とSAMDを介して相互作用するのではないかと考え,SAMDを有するDG産生酵素をホモロジー検索で調べた.その結果,スフィンゴミエリン合成酵素関連タンパク質 (SMSr) はSAMDを有し,DGKδのSAMDと相同性が高いことを見出し,さらに,DGKδはSMSrとSAMDを介して直接相互作用することを明らかにした.2019年度は両者の機能的連関について調べ,下記の3つの成果が得られた. 1. ヒトSMSrを哺乳類細胞中に過剰発現させると,DG量が増加し,特にパルミチン酸 (16:0) および/またはパルミトレイン酸 (16:1) 含有DG量が顕著に増加した.2. ヒトDGKδを哺乳類細胞中に過剰発現させても代謝産物のホスファチジン酸 (PA) 量の増加が認められなかった.しかし,SMSrと共過剰発現によって16:0 および/または16:1含有PAの有意な増加が認められた.3. SMSrのDGKδの酵素活性に対する影響を調べた.精製したDGKδにSMSrを添加するとDGK活性が有意に上昇したが,SMSrのSAMD欠損体の添加ではDGK活性に変化が認められず,SMSrのSAMDの添加ではDGK活性が有意に増加した.以上より,SMSrのSAMDはDGKδの活性化因子として機能することが示された. 以上の結果より,SMSrはDGKδの上流経路として機能することが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は,活性発見後40年間分子実体不明のホスファチジルコリン特異的ホスホリパーゼC (PC-PLC) がDGKδと相互作用することに注目し,その分子実体の同定を目的としていた.本研究ではDGKδの上流経路としてSMSrが機能することを発見した.今年度は,得られた成果をまとめ,査読付の欧文誌に投稿し,採録された.したがって,当初計画から実施項目を一部修正したものの,本研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
DGKδの上流候補タンパク質として同定したSMSrはセラミドとホスファチジルエタノールアミン (PE) を基質として,セラミドホスホエタノールアミン (CPE) とDGを産生する.しかし,哺乳類細胞においてCPEは極微量であることから,哺乳類のSMSrは細胞中においてDG産生活性をほとんど示さないと考えられていた.しかし我々は,上述の通りSMSrは細胞中においてDGを産生することを見出した.ともすると,SMSrは報告にない未知のDG産生活性を持つのではないかと考え,今後はSMSrの酵素学的性質について,下記の通り調べる予定である. 1. SMSrを大量に発現・精製するために,バキュロウイルス-Sf9昆虫細胞発現系を用いた精製系を立ち上げる. 2. SMSrがPC-PLC活性を有する可能性を含めて,SMSrの酵素学的性質について検討する.精製したヒトSMSrをin vitroでPC-PLC活性があるのか否かを開発したDG定量法を用いて検証する. 3. 同様にSMSrがセラミド非存在下でPC以外の他のリン脂質を水解し,DGを産生するのか否かを調べる.もし,DG産生 (ホスホリパーゼC) 活性を有するのならば,基質 (リン脂質の脂肪酸側鎖) に対する選択性があるのか否かを調べ,その酵素学的性質を詳細に調べる.
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Research Products
(21 results)