2019 Fiscal Year Annual Research Report
合成開口レーダを利用した圃場情報の取得に関する研究
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18J20030
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山谷 祐貴 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | リモートセンシング / 写真測量 / 農業土木 / 地理情報システム / 生育モニタリング / 作物分類 / 合成開口レーダ / 光学センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,次の2点の研究を実施した。 1.SARデータを用いた農作物情報の抽出に関する研究 CバンドおよびL バンドのSAR画像から,機械学習を用いて作付作物を分類した。Lバンドは,8月に観測された4偏波画像と,6月に2回観測された単偏波画像も使用した。その結果,LバンドはCバンドと比較して精度は低かった,6月のデータを使用することで昨年度より精度が向上した。また,Cバンドの一部をLバンドで代替して分類した。その結果,1時期を変更しても有意差はなく,2時期を変更すると有意差がみられたが,全体精度は0.9を超えた。最後に,2~3時期のLバンドに1~2時期のCバンドを加えて分類した。その結果,7月上旬までのCバンドを加えると高い精度となった。 2.SARデータを用いた水稲の生育状況推定 CバンドのSAR画像および光学画像から,重回帰分析から水稲の穂含水率を推定した。本年度は,2016~18年の画像を使用することで,モデルに使用するデータの汎用性向上を目指した。まず,Cバンドからモデルを作成したが,高い決定係数は得られなかった。そこで,画像の入射角ごとに分けてモデルを作成したところ,入射角の小さい画像のモデルから高い決定係数が得られた。このモデルは,2019年のSAR画像で検証を行った結果,良好なRMSEを得られた。次に,Cバンドと光学画像の併用でモデルを作成したが,高い決定係数は得られなかった。昨年度より解像度の低い光学画像を使用したことや,画像の観測時期が早すぎたことが原因として考えられる。最後に,Cバンドによるモデルの精度向上を目的に,栽培体系を考慮したモデルの作成を試みた。移植圃場のみ,直播圃場のみ,全圃場の3種類のモデルを作成し比較した。入射角の違いはダミー変数として含め,全圃場のモデルでは栽培体系もダミー変数として含めた。その結果,各モデルで更なる決定係数の向上がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も昨年度と同様に,研究遂行のための野外現地調査を順調に実施した。本年度の研究に必要となるデータの収集だけでなく,来年度の研究に関するデータの収集を複数の地域で行った。また,CバンドやLバンドSAR,光学画像の各衛星データを取得した。光学画像に関しては天候の関係で昨年度のような良好な画像を取得することができなかったが,SAR画像は時期数を変更,増加させることで,各々の研究に必要となる情報を取得することに成功した。研究成果としては,本年度実行予定であった3つの研究のうち,「撮像方向の異なるSAR衛星を使用した生育状況の把握」を実行し,学会発表を行った。また,来年度行う予定であった「穂含水率マップおよび収穫適期マップの作成」も併せて実行し,こちらに関しても学会発表を行ったほか,昨年度行った「C, L バンドSAR画像を使用した作付作物の分類」の改良を行い,論文にまとめた。また,先述の「撮像方向の異なるSAR衛星を使用した生育状況の把握」に関する研究で生じた課題を解決するために,新規の研究として「栽培体系ごとの水稲穂水分の推定モデル作成」を実行し,一定の成果を上げることに成功した。この内容は,来年度に学会発表や論文投稿を行うための準備を行った。一方で,本年度取り組む予定であった「過年度のデータを教師データとして使用した作付作物分類」や「合成開口レーダを利用した甜菜糖量の予測」などの研究は,ある程度進めてはいるものの,必要となるデータが取得できておらず,予定より研究が進められなかった。研究発表としては,農業食料工学会全国大会,農業農村工学会北海道支部会,農業気象学会北海道支部会の3学会で口頭発表を行った。また,学術論文としてはこれらに関する内容の査読論文を1編投稿した。さらに査読論文はもう3編投稿予定である。これら研究発表に関しても,おおむね予定通り順調に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究でも,引き続き①高精度かつ効率的な作付作物の分類と作目数の細分化の検討,②含水率や自然草高などの作物生育情報の取得と推定,③これらの結果をもとにした,収量予測および収穫適期予測への適用可能性,の3点を目的として研究を行う。特に次年度は,目的②③に沿った次の3点の研究を軸とする。 1. SARデータを利用した水稲の穂水分率および収穫適期の詳細な予測:目的②③の一環として,地域全体における水稲の穂水分率および収穫適期を予測する。水稲は,登熟後の穂水分率から収穫適期を概算することができる。特に本年度は,CバンドSARデータから得られる各種変数から,栽培品種ごとに水分モデルを作成し,精度の向上を目指す。得られた各圃場の穂水分の情報から,収穫適期を計算し,収穫適期を予測する。また,その結果をマップに加工し,農業従事者の方々が参考にできる情報か聞き取り調査を行う。 2. SARデータを利用した小麦の穂水分率モデルの作成と複数地域での適用:目的②の一環として,過去の研究で作成された小麦の穂水分率モデルを複数の地域で適用できるか検討する。特に,対象とする北海道の3地域のうち2地域のSARデータよりモデルを作成し,残りの1地域のSARデータに当てはめることで,モデルの汎用可能性を検討する。 3. SARデータを利用した馬鈴薯のLAIの推定:目的②③の一環として,地域全体における馬鈴薯の収量の推定を行う。馬鈴薯の収量にはLAIが関係深いとされているため,本研究ではまず馬鈴薯のLAIをSARから推定するモデルを作成する。 なお,データを取得するにあたり,年10回程度の野外現地調査を引き続き行う。また,以上の研究結果をもとにした口頭発表を各学会で2~3回程度行う。並行して,研究成果をまとめ,新たな査読付き論文を3~5編程度投稿するほか,最終学年のため3年間の内容をまとめた博士論文の執筆を進める。
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Research Products
(3 results)