2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18J20037
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 雄貴 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 幾何学的力学系理論 / 数理流体力学 / Euler-Arnold方程式 / 葉層構造 / 共形構造 / 渦力学系 / Killingベクトル場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は曲面上の流体方程式が生成する力学系に対し,その性質を流れ場である曲面の幾何構造の観点から特徴付けることである.これに対し,本年度はKilling対称曲面(境界に接する恒等的でない等長R-作用による特異Riemann葉層構造を持つ有向2次元Riemann多様体)上の渦力学の定式化とその応用を行なった.具体的には以下の5点である. (1)Killing対称曲面に対し,葉層座標かつ共形座標となる座標(円柱座標)をKillingベクトル場の不動点を除く領域全体で解析的に構成した.これによりKilling対称曲面上の流れの力学系的性質を曲面上の共形構造に加え,特異Riemann葉層構造の観点からも特徴付けられる. (2)円柱座標を用いてKilling対称曲面上の流体力学的Green関数の解析表示を導出した.閉曲面の場合はその解析的構成は困難であるが,Killingベクトル場の運動エネルギーの水平測地線方向の積分を用いることで,構成することができた. (3)円柱座標の等角因子がKillingベクトル場の速度で与えられることに着想を得て,Killingベクトル場とポテンシャル流を含む非回転ベクトル場の速度とEuler-Arnold流としての圧力に対し,それぞれの対数が曲面のGauss曲率の±1, ±2倍をsource termに持つPoisson方程式を満たすことを発見した.以上3点は論文としてまとめ,投稿済みである. (4)Euler-Arnold流を背景流とする点渦・渦層・渦斑力学系の発展方程式の流体力学的Green関数表示を導出した.これを用いてKillingベクトル場に沿ったN点渦環と渦層が定常解となることを示した. (5)榊原航也博士との共同研究により,境界間写像とmoduliが与えられている場合に関して,極小曲面上の点渦力学系の基本解近似解法による数値解法を開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目標は曲面上の点渦力学系に対し,理論解析として3次元Euclid空間に埋め込まれたコンパクト回転体上の点渦力学系の定式化及びN点渦環の導出とその安定性・分岐解析を行い,数値解析として極小曲面上の点渦力学系の高速高精度数値解法を開発することであった.数値解析に関しては予定通りであったが,理論解析に関しては安定性・分岐解析には至らなかった.この原因は研究を推進するにあたり,本研究の目的において流れ場を回転体に限定した理論解析は十分でなく,研究構想の幾何学的流体力学における位置付けを再検討する必要性が生じ,結果として当初の計画を拡張した形で研究を遂行したからである.回転体に限定することが十分でない理由は以下の2点である. ・本研究において主として用いるRiemann多様体上の非圧縮非粘性流体モデルであるEuler-Arnold流が外在幾何によらず内在幾何のみにより定式化されるという点で,外在幾何の存在を仮定することは本質的ではない. ・回転体のみに限定した渦力学研究では流れ場の幾何は外在幾何と不可分となるために流れの力学系的性質から原因となる流れ場の幾何構造を特定できない. 流れ場を回転体からKilling対称曲面に拡張した結果,本研究の目的に整合的かつ数学的・物理学的に意義のある仮定に立脚した曲面上の渦力学の統一的基礎理論を構築することが可能となった.さらに拡張した恩恵として,非回転ベクトル場とKillingベクトル場の物理的性質に関する幾何学的応答特性を発見でき,結果としてそれぞれを背景流とした理論構築とその比較という,当初予期していなかった視点からの渦力学系の理論深化への貢献が可能となった.以上から本年度の研究に順調な進展があったと判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で得られた知見を考慮し,今後は背景流に沿った特徴的かつ特異な渦度場が生成する力学系に対し,その性質を流れ場である曲面の幾何構造の観点から特徴付けることを目標として研究を推進する.具体的にははじめに解析的手法による研究として,Killingベクトル場に沿ったN点渦環と渦層に関して安定性・分岐解析を行い,その性質の流れ場の変形に伴う変化を幾何学的に特徴付ける.次に数値的手法による研究として,非回転ベクトル場に沿ったN点渦環と渦層とKillingベクトル場の場合と数値計算により比較する予定である.また極小曲面上の点渦力学系研究に関しては,本年度と同様榊原航也博士との共同研究により,流れ場の変形に伴う点渦力学系の数値解析を行うべく,与えられた境界配置から境界間写像とmoduliを計算するための数値解法に関して考察する.
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Research Products
(12 results)