2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18J20102
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
江村 菜津子 岩手大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 家畜 / 初期胚 / 組織分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ブタ初期胚の組織分化を制御する分子基盤の解明を目的に、マウス胚で重要とされているHippo pathwayのブタ胚における機能解明を試みた。哺乳動物胚は桑実期から胚盤胞(BC)期にかけて内部細胞塊(ICM)と栄養膜細胞(TE)の組織分化を生じる。マウスでは、TE分化には核内でのTead4-Yap1複合体の形成が必須であり、ICMを形成する細胞では、Hippo pathwayによってTead4とYap1の結合が阻害されている。すなわち、Hippo pathway関連因子であるLats1/2によってYap1がリン酸化され、Yap1が核内移行できなくなることで、Tead4との結合が阻害される。ブタ胚においては、TEAD4が胚発生に重要であることは明らかとなっているが、Hippo pathwayに関する研究は進んでいない。本年度は、ブタ胚におけるHippo pathwayの機能解明を目的に、Hippo pathway関連因子であるLATS2の機能解析およびTEAD4-YAP1複合体形成阻害剤の体外発生培地への添加実験を行った。 ブタ卵子および初期胚においてLATS2 mRNA発現動態を解析した結果、卵子で最も高く、その後有意に減少した。LATS2の発現抑制を行うと、桑実期以降の発生が阻害された。また、LATS2発現抑制胚において組織分化関連因子であるOCT-4およびSOX2の発現量が低下した。これらのことから、ブタ胚発生においてLATS2は必須であり、ICM/TE分化にHippo pathwayが寄与している可能性が示された。TEAD4-YAP1複合体形成阻害剤であるVertepolfinの添加実験では、体外培養3日目までの添加において、桑実期以降の発生が阻害された。このことから、マウスと同様にTEAD4-YAP1複合体がブタ胚発生に重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ブタ初期胚の組織分化に関わるHippo pathwayの重要性の検討の一環として、Hippo pathway関連因子であるLATS2の発現動態およびLATS2発現の人為的抑制がブタ初期胚発生におよぼす影響について検討を行った。その結果、ブタ卵子および初期胚におけるLATS2の発現動態が初めて明らかとなった。また、LATS2の発現抑制によって、桑実期以降の発生阻害および組織分化関連遺伝子の発現量の変化が生じることを明らかにすることができ、ブタ初期胚の組織分化にHippo pathwayが関与する可能性を示すことができた。さらに、本年度は、Hippo pathwayの標的であるTEAD4-YAP1複合体の形成阻害剤であるVertepolfinがブタ初期胚発生におよぼす影響についても検討しており、LATS2の発現抑制と同様にVertepolfinが桑実期以降の発生を阻害することを示した。 また、TEAD4発現抑制がブタ初期胚の発生および組織分化関連遺伝子発現におよぼす影響に関する論文を国際誌に投稿し、現在、改訂作業中である。その他、研究成果を米国で行われた国際学会および国内の学会で発表している。 上記のように、本年度は、研究計画に従って実験を遂行しており、さらに研究成果の公表も行っていることから、「おおむね順調に進展している。」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス胚では、TE分化にTead4-Yap1複合体が必須である。ICMを形成する細胞では、Lats2によってYap1がリン酸化されることで複合体が形成されず、TE分化が阻害される。ブタ胚においては、昨年度までの研究からLATS2、TEAD4およびYAP1が胚発生に必須であることが明らかとなっている。このことから、ブタ胚でもマウスと同様のICM/TE分化における制御メカニズムの存在が示唆されるが、TEAD4とYAP1が複合体として機能しているのかは未だ明らかでない。また、マウス胚において、Lats2の機能は細胞極性による制御を受けることが明らかとなっているが、ブタ胚における細胞極性に関する報告はない。本年度は、まずTEAD4-YAP1複合体に着目してTEAD4-YAP1複合体形成阻害剤であるVertepolfinの培地への添加実験およびTS様細胞を用いた分子生物学的解析を行う。さらに、細胞極性関連因子であるPARD6Bの機能解析を行う。 ブタ胚をVertepolfin添加培地で体外培養した後、組織分化関連遺伝子であるOCT-4およびSOX2の発現量をmRNAレベルではRT-リアルタイムPCR、タンパク質レベルでは各特異抗体を用いた蛍光免疫染色によって解析する。 ブタ胚をBC期まで培養した後、透明帯を除去し、ブタ線維芽細胞のフィーダー上でout growthさせることでTS様細胞の作出を試みる。TS様細胞が得られた場合は、pull downアッセイによりTEAD4とYAP1の結合の有無を解析する。 ブタ胚におけるPARD6B mRNAの各発生ステージでの発現量を解析するとともに、蛍光免疫染色を行うことで、ブタ胚における細胞極性の出現時期を特定する。さらに、RNA干渉法によりPARD6B発現抑制胚を作出し、発生能とOCT-4およびSOX2発現におよぼす影響について検討する。
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Research Products
(2 results)