2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J20148
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小松 国幹 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 宇宙マイクロ波背景放射 / 偏光変調器 / 半波長板 / ミリ波 / 極低温 / インフレーション / 原始重力波 / Bモード偏光 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙マイクロ波背景放射のBモード偏光の全天観測による原始重力波強度の測定から代表的なインフレーションモデルの検証を行う科学衛星LiteBIRDでは偏光観測の精度向上の為,連続回転半波長板を利用した偏光変調器を搭載する.本研究はLiteBIRDの要求を満たす低周波望遠鏡用の偏光変調器の開発を目的としている.偏光変調器に用いる半波長板にはミリ波帯域において広帯域で使用可能であることが要求されており,ミリ波直線偏光を連続回転半波長板へ入射させた時の通過後の強度のうちの変調されているものの割合を表す変調効率によって評価される.広帯域化のために複屈折物質であるサファイアを光学軸の角度を変えながら積層した広帯域多層半波長板を採用しており,これまでに低周波望遠鏡の観測帯域での使用を想定した9層の広帯域多層半波長板の小型版を作製し33-260GHzという広帯域化での常温での検証からその実現性を示した.実際の観測において偏光変調器は熱放射雑音低減の観点から20K以下の極低温で運用されるため最終的な検証のためには極低温でミリ波光学測定を行うことが必要となる.本年度は極低温での測定に向けた準備としてKavli IPMUの小型4K GMクライオスタットで低温ミリ波光学測定を行うための改良と動作試験を行った.クライオスタットに2つの光学窓を追加することで光源および検出器を常温の外部に配置したまま内部の極低温部を通過させたミリ波の強度を測定する方法を採用した.まず常温で単層のサファイアの透過率測定を行い光学系が動作していることを確認した.冷却後の測定で50Kで150-160GHzの範囲で単層のサファイアを小型回転機構で回転させ変調信号の測定に成功している.現在は赤外線フィルターや熱パスの改良による到達温度の改善を行なっている.今後は半波長板の多層化や帯域の33-260GHzまでの拡張を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度始めに計画していたKavli IPMUの小型4K GMクライオスタットに対する低温ミリ波光学測定を行うための改良を行うことができた.到達温度が50Kと想定よりも高いという課題は残るものの150-160GHzの帯域で単層のサファイアの変調信号の測定に成功しており測定結果としても概ね期待通りのものが得られている.到達温度に関してもフィルターや熱パスなど改良可能な箇所が多くあり今後改善していくことが見込まれる.測定帯域の拡張は光源の付け替えによって行うことが可能で,波長の変化によって発生する問題に関しても光学シミュレーションとの比較等で対処していく予定である.以上のように年度始めの計画通りに測定系構築が進み初期の測定において期待通りの結果が得られたこと,いくつか課題はあるものの改善可能なものであることなどから研究は概ね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はまず今年度に構築した低温ミリ波光学測定系の問題点の改善を行う.到達温度が高いことに関して,入熱は冷凍機の冷却能力から考えると光路上のIRフィルターがきちんと動作していれば十分4Kまで冷却可能であると計算される.そのことから現在のIRフィルターが想定よりも入熱を遮断てできていないことやコールドヘッドとの間の熱パスが接触抵抗等によって十分に機能していないことなどが原因として考えられる.前者に関してはフィルターの厚みや枚数,種類を増やす,またはメタマテリアルのメタルメッシュを利用したより性能の良いものを購入し付け替えること,後者に関しては単純に熱パスの本数を増やすことや接触部を銅製にするまたは銅メッキをすることで熱伝導率を向上させる等で改善が見込まれる.測定帯域の拡張にあたっては特に低周波側において窓径との関係から回折等による迷光の影響が現れることが考えらる.光学シミュレーションソフトを用いた計算結果との比較を踏まえて窓のデザインの変更や光源のホーンをよりビームの細いものに変えるなどして対処を行っていく予定である.最終的には広帯域多層半波長板に対して共同研究者が開発している反射防止構造を実装した上で極低温かつ33-260GHzという広帯域での変調効率・透過率等の測定を行うことを目指す.そこでの結果から,開発した偏光変調機を用いることでLiteBIRDの測定する原始重力波の強度に当たるパラメータであるテンソル・スカラー比の系統誤差をどの程度低減できるかや,逆に変調機を用いることによって発生する系統誤差はどの程度であるかの見積もりを行う.
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