2019 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における帝国秩序の再編と統合―戦間期農業政策を中心として
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18J20244
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村瀬 啓 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 日本政治史 / 広域経済 / 植民地朝鮮 / 満洲国 / 農業政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
採用 2 年度目となる本年度は、昨年度に引き続き、1930 年代日本における帝国内関係(内地政府と 外地政府との関係)を、経済政策を事例として分析するための調査に従事した。 まず、昨年度から積み残していた修士論文の改訂を済ませ、学術誌に投稿した。改訂の途上で、以下の課題が浮上した。即ち第一に、外地政府側の利害と動向については部分的な言及を行うに止まり、第二に内外地対立の原因が専ら官庁利害から説明され、外地政府がいかなる広域経済を望まし いと考えていたかという、構想の次元での分析を欠いた。そこで、内地政府と特に鋭く対立した朝鮮総督府の経済政策・構想を調査することが、本年度の主要課題として認識された。 具体的には、朝鮮総督を務めた宇垣一成の日記など周知の公刊史料の再解釈に加えて、京都大学経済学部経済資料センター、東京経済大学桜井義之文庫、東京大学東洋文化研究所所蔵の、朝鮮総督府の経済開発に関する史料の収集にあたった。京大経済資料センターは朝鮮の植民地開発に関与した植民地企業である不二興業と、朝鮮総督府管轄の朝鮮殖産銀行の史料を所蔵している。他の機関では、 朝鮮総督府の刊行物のほか、総督府主催の大規模な審議会(産業懇談会、産業経済調査会、時局対策調査会)の議事録を収集した。 これらの史料を本研究の問題関心から分析することが今後の課題であるが、現時点では、1930年代前半の宇垣総督期には、朝鮮開発のため内地の経済統制政策に対して自由主義を標榜する風潮が総督府及び植民地財界に根強いことに注目している。前年度までの研究において専ら官庁間対立の観点から捉えてきた当該期の内外地対立は、経済政策・構想の面でも顕著だったことを意味するからである。30年代前半のこうした傾向が、その前後の時期といかなる関係にあるかを検討することが、今後の課題となるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最も基本的な対象と視角を提示する論文の投稿に目途がつき、またそこで残された課題に即した論点の発見と史料収集を進めることが出来た。他方で、新たに着手した研究を具体的な成果として公表するには至らなかった。以上の両面を勘案して、進捗状況は「おおむね順調に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に収集した史料の分析を進め、その成果を公表する。この課題に取り組むことは、「研究実績の概要」欄にて述べた通り、30年代とその前後の時期との関係を考察することにつながる。上の作業を足がかりとして、採用以来注力してきた30年代に関する考察から、20年代の植民地開発や戦中期の広域経済論へと分析の力点を移し、本研究の骨子となる論点と史料を揃える。
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