2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18J20257
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北山 尚美 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | PAR-2 / ILC2 |
Outline of Annual Research Achievements |
化合物スクリーニングおよびPAR2阻害剤の評価を行い、使用可能なPAR2阻害剤の、接触皮膚炎モデルマウスにおける抗炎症効果、またアトピー性皮膚炎モデルマウスにおける抗炎症効果と皮膚バリア機能改善効果を明らかにした。 MC903モデルはADモデルマウスの一つで、ビタミンDアナログを反復的に皮膚に塗布することで、Th2の炎症が起こりAD様の皮膚炎が惹起される。このモデルでは特に、thymic stromal lymphopoietin(TSLP)を介した2型自然リンパ球(Type 2 Innate Lymphoid cells; ILC2s)の増加と、ILC2sからのサイトカイン産生がADの発症に重要な役割を担っていると報告されている(Sci Transl Med. 2013)。使用可能なPAR-2阻害剤をこのMC903モデルマウスに投与し、炎症細胞の浸潤、バリア機能、掻痒、サイトカインの評価を行った。PAR-2阻害剤はMC903モデルマウスの耳介厚腫脹を有意に抑制し、炎症細胞、特に好酸球の局所浸潤、Th2系サイトカインの産生を抑制した。 さらに、現在実施しているMC903モデルでは、ILC2がその病態形成に重要な役割を果たしていることから、ILC2について詳細に検討した。その中で、皮膚とその所属リンパ節に存在するILC2sにPAR-2が発現していることを見いだし、その機能の解明を試みた。具体的には、In vitroでマウスのリンパ節をPAR-2アゴニストで刺激し、ILC2sから産生されるサイトカインをフローサイトメトリーにて解析することにより、ILC2sが直接PAR-2に刺激され、IL-5を産生することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者はこの1年間、申請内容である掻痒メカニズムの解明と新規止痒剤の開発について研究を進めました。申請者は、化合物スクリーニングおよびPAR2阻害剤の評価を行い、使用可能なPAR2阻害剤の、接触皮膚炎モデルマウスにおける抗炎症効果、またアトピー性皮膚炎モデルマウスにおける抗炎症効果と皮膚バリア機能改善効果を明らかにしました。現在はその分子メカニズムについて検討を行っています。当初期待されていた掻痒に対する効果については、アトピー性皮膚炎モデルマウスの1つであるMC903塗布モデルマウスにてスクラバリアル等を用いて検討を行いましたが明らかにはできませんでした。掻痒については今後、さらに掻痒の強いモデルの使用や、スクラバリアル以外の手法を用いて検討するため準備を進めています。 以上より、ある程度の進展はありますが、当初の期待よりやや遅れていると評価しました。
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Strategy for Future Research Activity |
皮膚末梢神経の動態評価について、末梢神経特異的Creマウス(Peripherin-Creマウス)と、GFPを用いた蛍光カルシウムプローブであるGCaMPマウスを交配し、Peripherin陽性の末梢神経のみ緑色に発色するマウスを作成した。 作成したマウスを用いて二光子励起顕微鏡を用いて末梢神経の動態評価を試みた。マウスの耳介に1%クロトンオイルと、カプサイシンを塗布し、末梢神経の発火の観察を試みたところ、マウス皮膚内のメラノサイトでも神経と同様に発火が観察された。末梢神経における発火のみを観察するためにマウスのアルビノ化をすすめ、また、掻痒に関連する神経としてPeripherinよりも多くの神経で発現を認めるNAV1.8-Creマウスを導入した。また、発火時のみならず定常時も末梢神経の観察をより明確にするため、NAV1.8-Creマウスに、GCaMPマウスに加え、dTomato(dimeric Tomato)遺伝子2つをタンデムにつなぎ合わせ、タンデム2量体を形成するよう設計されていることにより非常に明るい蛍光シグナルをもつtdTomatoマウスを交配して、NAV1.8-Cre×GCaMP×tdTomatoマウスを作成した。現在はこのマウスを使用し、掻痒に関連する末梢神経の動態評価を進めている。 また、PAR-2は神経細胞にも発現しており、掻痒への影響も示唆されていることから、PAR-2阻害剤がADモデルマウスの掻爬行動にも効果が認められるかを検討するため、MC903モデルにおいて、スクラバリアルを用いて掻爬行動の観察を行ったが、PAR-2阻害剤投与による掻爬行動の回数の有意な減少は認めなかった。これについては、今後MC903モデル以外のADモデルマウスでも検討する予定である。
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