2018 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本における漢字使用の実態に関する通時的・計量的研究
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18J20287
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
菅野 倫匡 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 表記 / 漢字使用の実態 / 漢字含有率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は複数の媒体やジャンルを対象に漢字含有率(文章に占める漢字の割合)を調査し,更に漢字含有率に影響を与える要因を特定することにより,現代日本における漢字使用の実態を通時的・計量的な観点から明らかにすることである。 この目的の達成に向けて今年度は①漢字含有率の算出方法についての検討,②漢字含有率に影響を与える要因についての検討,③新聞データの構築の3点について重点的に取り組んだ。 まず,①では漢字含有率の算出方法が研究によって異なっている現状を踏まえ,それぞれの算出方法を整理した。その上で漢字含有率の算出方法が異なることにより,どの程度の差が見られるかという点について近現代の小説作品等に基づいて検討した。その結果,現代の雑誌記事に基づく従来の報告に比して差が小さくなることを指摘した。また,このような検討は算出方法を異にする研究の結果を比較したり評価したりするための一助となるものであり,本研究の位置づけにも関わるものである。 次に②では特に語種(和語・漢語・外来語)の構成比率との関わりに着眼し,既に漢字含有率について報告した芥川龍之介受賞作品を改めて取り上げ,各作品について語種別の漢字含有率を算出した。その結果,これまで漢字含有率が減少していることの要因の1つとして挙げられてきた漢字表記和語の減少は仮名表記和語の増加による相対的な減少であるということを指摘した。また,この検討は漢字使用の実態を明らかにするための方法論の1つとして特に重要なものであり,来年度以降の分析のための基盤となるものである。 最後に③では当初の計画通り,新聞データの構築に着手した。ただし,これは入力や校正の作業に時間を要することから来年度も継続して取り組み,最終年度において完成する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では①漢字含有率の算出方法についての検討や②漢字含有率に影響を与える要因についての検討は最終年度において取り組む予定であったが,これらは本研究において計画している新聞等の調査の方法にも関わるものであることから計画を修正し,今年度は①や②について優先的に取り組んだ。その結果,①や②についてはいずれも一定の成果を収めており,既に①の成果の一部を計量国語学会第六十二回大会において発表し,②の成果の一部を第117回漢字漢語研究会において発表していることから「おおむね順調に進展している」と言える。 また,③については今年度は少し遅れているものの当初の計画では最終年度において完成する予定であり,既に述べた通り,今年度は①や②について優先的に取り組み,一定の成果を収めていることから全体としては「おおむね順調に進展している」ものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は①漢字含有率の算出方法についての検討や②漢字含有率に影響を与える要因についての検討によって得られた成果を論文として公表することを期して更に検討を深める予定である。 また,③新聞データの構築については既に述べた通り,最終年度において完成することを目指し,来年度も継続して取り組む予定である。更に可能であれば,計画を前倒ししてミニブログ等の調査の計画や実施に着手する。
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Research Products
(2 results)