2018 Fiscal Year Annual Research Report
ドメイン構造を有する単分子ポリマーナノ粒子の構築法開発
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18J20302
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 涼斗 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 分子内架橋 / 側鎖変換 / 活性エステル / ラジカル重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
一種類のモノマーから種々の性質を有する単分子ポリマーナノ粒子(SCPN)を任意に構築するための新規手法の開発に着手した。トリフルオロフェニルエステルや N-ヒドロキシスクシンイミドエステルに代表される活性エステル類はアルコールやアミンなどとエステル交換またはアミド形成反応を起こすことに着目し、単一の前駆体から任意の性質を有する SCPN の構築法を考案した。活性エステルモノマーとして、ペンタフルオロフェニルメタクリレート (PFPMA)を合成し、ラジカル重合の一種である原子移動ラジカル重合 (ATRP) を試みた。重合条件を最適化し、ポリペンタフルオロフェニルメタクリレート (PPFPMA) を 数平均分子量 19900 g mol-1、分子量分散度 1.09 で得ることに成功した。次に、PPFPMAに対してモノオール (1-ブタノール) および モノアミン (1-ブチルアミン) を用いたエステル交換反応またはアミド形成反応を試みた。その結果、アルコールによるエステル交換反応は進行しないことが分かった。一方で、アミンによるアミド形成反応は遅いながらも定量的に進行した。続いて、ジアミン (1,2-エチレンジアミン) による分子内架橋を検討した。そこで、ポリマー濃度を検討したところ、0.3 g L-1 程度で多量体の形成が無視できる程度に抑制しつつ分子内架橋体を得られることを見出した。続いて、同様の条件下、ジアミンによる分子内架橋を行った後、系内に 1-ブチルアミンを添加することによる分子内架橋・側鎖変換のワンポット反応を試みた。その結果、側鎖転化率 73 % でSCPN を得ることができた。側鎖変換率が定量的でないのは、反応が大希釈条件下で行われるためであり、より効率よい反応条件の探索が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ポリマー合成、側鎖変換条件検討、分子内架橋条件検討の各段階において、予想以上に時間を要した。特に、活性エステルモノマーのリビングラジカル重合は報告例が少なく、最適な条件を見出すのに最も時間を割いた。数種類のモノマーを検討したが、それぞれの最適重合条件が全く異なることも要因の一つである。側鎖変換および分子内架橋においても、予想よりポリマーの反応性が低く、理想的な側鎖変換条件を見出すためにやや長期間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、分子内架橋および側鎖変換の効率向上を目指してさらなる条件検討を行うとともに、ドメイン構造の構築へつなげるべくブロック共重合体へと展開する。現在用いているSCPN構築法が満足のいく結果を与えないことも想定し、より効率よい架橋反応の採用も視野に入れ、同時進行で検討を進める。
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