2018 Fiscal Year Annual Research Report
アメバチ亜科寄生蜂の熱帯地域における夜間適応と種多様性の系統進化学的解明
Project/Area Number |
18J20333
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
清水 壮 神戸大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ヒメバチ科 / アメバチ亜科 / 分類学 / 分子系統学 / 生態学 / 寄生蜂 / マレーゼトラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、遺伝子実験及び系統解析に関する技術の習得や寄生蜂の日活動性の定量調査のための予備調査、ホシアメバチ属Enicospilusの分子系統学や生物地理学、未記載種の記載などに関する論文の準備などを進めてきた。 一般に熱帯地域において高い多様性を示すアメバチ亜科の中で例外的に温帯地域に分布の中心を持つアメバチ属Ophionは、特に従来の形態形質による分類が困難であり、その多様性の解明が遅れてきた。本年度、主に日本産サンプルを用いて本属の形態形質及びミトコンドリアCO1領域に基づき整理を行った。その結果、従来日本からは10種のみが知られていたが、実際には、少なくとも60種が存在することが確認された。一部の種は形態形質により非常に容易に識別が可能であるが、多くの種は現段階では形態形質による分類が困難であり、有用判別形質を見出さなくてはならない。また、今回認められた種のほとんどが未記載種であるため、その記載も必要である。現在は、比較的明瞭に識別可能な種群に関しての新種記載を伴う系統と分類の論文の準備を進めている。 日本産ホシアメバチ属の研究では、日本産種には非常に多くの誤記録やシノニムなどの分類学的問題点が存在し、また、複数の未記載種や未記録種が存在することが明らかとなった。更にミトコンドリア及び核の複数領域の配列情報に基づいた系統解析を行った。現在、これらの成果を公表するため論文の準備を行っており、2019年度夏ごろには投稿できる見込みである。 寄生蜂の日活動性の定量調査のための予備調査は、新潟県の里山においてマレーゼトラップを用いて行った。その結果得られたサンプルは現在、ソーティングを行っている最中であるが、本調査に必要な課題を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、上記の通り、遺伝子実験及び系統解析に関する技術の習得や寄生蜂の日活動性の定量調査のための予備調査、ホシアメバチ属Enicospilusの分子系統学や生物地理学、未記載種の記載などに関する論文の準備などを進めてきたが、本課題はおおむね順調に進展していると判断した。 遺伝子実験及び系統解析に関する技術は、主にアメバチ属とホシアメバチ属を用いた研究において習得でき、実用可能な状態にすることができた。日活動性の定量調査においても、本年度は予備調査であったが十分に意味のあるデータを得ることができた。 その一方で、本年度に実施を計画していた、国際ハチ目学会での発表やロシアや北海道での標本調査は災害の影響があり実施できなかった。しかし、国際ハチ目学会では発表は出来なかったものの参加することができ、世界各地の研究者と有益な情本交換をすることができた。また、鏡紋の組織切片作成も実施できていないが、他分類群での研究手法のレビューや行動観察により、今後のより詳細かつ具体的な実験手法を見出すことができた。したがって、これらに関しても大幅な遅れはなく、本課題全体としてはおおむね順調に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在執筆中のホシアメバチ属及びアメバチ属の論文を早々に投稿することを目指す。また、鏡紋の機能を明らかにするため解剖、組織切片作成、μCTスキャンを行う予定である。加えて、行動実験や音響学的実験も実施予定である。また、野外において遺伝子実験用の新鮮なサンプルの確保、マレーゼトラップを用いた日活動性の定量調査を実施する。更に、下半期にはイギリス自然史博物館に調査に行く予定である。
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