2018 Fiscal Year Annual Research Report
アクティブファイバー標的で拓くマルチストレンジネス多体系の世界
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18J20396
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
越川 亜美 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 量子アニーリング / ベイズ的最適化 / 実験核物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の大きな目標は、Ξハイパー核の精密分光実験によりその束縛状態をピーク構造として捕え、ピークの自然幅からΞN-ΛΛ転換幅を世界で初めて測定することである。Ξハイパー核の収量を保ちつつ、エネルギー分解能を向上させるため、シンチレーティングファイバーを束にして作製したアクティブファイバー標的を実験に使用する。 本研究では特に、深層学習および統計的機械学習理論、さらに量子アニーリングを利用した解析アルゴリズムの開発を中心に行っている。 本年度の主な研究成果は、量子アニーリングマシンを用いた組合せブラックボックス最適化である。量子アニーリングとは、量子ゆらぎを利用してイジング模型の基底状態を探索する方法である。組合せ最適化問題をイジング模型にマッピングし、量子アニーリングマシンを用いて解いていくような実問題の最適化はすでに実証されている[Neukart 2017, Tobias 2017等]が、マシンの制約上、2体相互作用で記述できるような問題しか扱うことができない。しかし、本手法を用いることで2体相互作用のみならず、多体相互作用が含まれる問題に対しても最適解を求めることが可能になった。ブラックボックス関数が2体相互作用であるときだけでなく、3体相互作用を含む場合でも最適解を得ることができることを確認し、国内学会「日本物理学会第74回年次大会」および国際会議「Qubits Europe 2019」において研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた通り、従来は、組合せ最適化問題をアニーリングマシンで解く上で、2体相互作用で記述できるような問題しか扱うことができなかった。しかし本年度の研究により、さらに高次の相互作用を含む問題をもアニーリングマシンで取り扱うことが出来るようになった点でこの成果は極めて重要である。 本手法は原子核実験に留まらず、シミュレーションや実験を行う多くの分野で応用することができると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はブラックボックス関数の問題の難易度と、獲得関数を解く際に用いるソルバーの向き不向きの関係を調べるとともに、アルゴリズムの改良を行う予定である。また、ハドロン物理実験の解析に本手法を適用することを検討している。
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