2018 Fiscal Year Annual Research Report
中高年者を対象とした「アドバンス・ケア・プランニング促進介入プログラム」の開発
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18J20492
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 裕規 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | アドバンス・ケア・プランニング / ACP / 終末期 / 意思決定支援 / 対話 / 地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
アドバンスケアプランニング(ACP)とは終末期に受けたい医療や過ごしたい場所について、患者と家族・医療者が早期から話し合うプロセスを指し、本研究では将来の多死社会でもより良い終末期を実現するために、地域市民を対象にACPに関する教育介入プログラムを開発し、その有用性を評価することを目的とする。 平成30年度はACP介入に関する文献・書籍のレビューを行い、また地域で実施されているACP関連プログラムに実際に参加し、その実態を調査した。これらの調査から、本研究が対象とする比較的長期間の予後が想定される成人におけるACPとは自分の価値観を言語化して他者に伝えるという営み、すなわち自分自身を他者に開示する行為であり、実存的な苦痛を伴う行為であることが明らかになった。それゆえ、参加者が自分を開示するという負担を引き受けながらも、最後まで自分らしく生きるために自身の価値観を伝えることができるように支援するプログラムが求められるといえる。 本研究では日本人を対象とした介入プログラムでは合意形成に基づく集団的意思決定、特に家族間での集団的意思決定が重要であるという日本的価値観、および医療における代理意思決定者の多くは家族であるという事実に基づき、家族間でのACPの促進が重要であると想定し研究を進めてきた。しかしながら、昨年度の研究成果から、実際的な代理意思決定者と自分の価値観を伝え共有したいと思う相手は必ずしも一致しない場合があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は介入プログラムの作成に必要なACPの準備性、ヘルスリテラシーなどについて研究グループで検討し、次年度の介入に向けた調査を着実に実施することができた。これらの調査の結果から対象とする集団に若干の変更が予定されているものの、日本の状況および文化的価値観に即したACP介入モデルの開発という基本的姿勢に変更はない。プログラムの具体的なスケジュールやコンテンツについて検討した結果、知識提供型の講義モジュールを実施しつつ、参加者同士が対話し自らの経験について新たな意味を見出し、また参加者がその場に参与するということ、すなわち対話そのものが介入の目的となることなどについて研究グループ内で合意を形成している。次年度は京都府におけるACPの地域介入を実施する予定としており、現段階ではおおむね期待通り研究が進展しているものであると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第一の目的は自身の価値観を言語化し他者と共有できるように促すことにあるため、本年度に実施する介入プログラムでは家族間での対話に限定することなく、自分が意向を伝えたいと思う相手を参加者が自由に選択できる形とする。その中核となるものは参加者同士の対話であり、対話理論に即して参加者の思考の表出や意味の再形成を支援するプログラムを検討する。また研究対象者の選択基準に関して、ACPが個人の持つ価値観を表出する行為であるという点、およびリクルートの実施可能性の点を考慮し、対象者を中高年者に制限することなく、自身の終末期について考えることに関心のある成人まで範囲を拡大することを予定している。 介入の実施は次年度の下半期に予定しており、そのために介入プログラムの検討を継続すると同時にリクルート活動を開始する。また、介入の質および再現可能性を向上させるために、ファシリテーターマニュアルを作成し、介入実施前に一定の教育期間を設けることとする。
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Research Products
(1 results)