2019 Fiscal Year Annual Research Report
Poetry and Philosophy in Giacomo Leopardi
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18J20645
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
藤澤 大智 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | レオパルディ / ペシミズム / 想像力 / 対話篇 / 翻訳 / 受容史 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、昨年度から引き続き行なっている『ジバルドーネ』の研究においては、詩と哲学の関係についてのレオパルディの見解の変化をめぐる従来の議論への回答を試み、レオパルディ哲学における想像力の働きについて研究した。これにあたり、英米哲学における思考とイメージの問題について理解を深め、これらの議論が近年のレオパルディ研究における比喩やアナロジーの重要性についての議論と問題意識を共有していることを見出した。また、哲学者フランチェスコ・マリア・ザノッティの著作を研究することで、レオパルディの唯物主義的思索の材源についても考察した。 また、今年度は、『オペレッテ・モラーリ』の研究に踏み込んだ。まず、『ジバルドーネ』と『オペレッテ・モラーリ』の間にある矛盾を調査し、それに基づいて『オペレッテ・モラーリ』の諸作品に論理の反語的使用を推定するという作業を行なった。また、当初予定していなかったものの新たに浮上した観点として、対話篇における応答表現の多様性について研究するとともに、作品配列を巡る先行研究の議論に踏み入る事により、矛盾をあえて矛盾そのものとして浮き彫りにするというレオパルディの戦略を、個々の小作品の内部においてだけではなく、『オペレッテ・モラーリ』全体の構造においても見出すことができるという結論に至った。 また、ローマ大学において韻文作品「無限」の日本語訳についての研究発表を行なったが、このことを契機として、当該作品およびレオパルディの日本における受容について研究し、大きな成果を得た。これによって、レオパルディの日本における受容史が、とりわけそのペシミズムについての議論との関わりの深さにおいて、世界的にも興味深い考察対象であるという結論に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初から予定していた研究内容については、予想を上回る成果を得ることができたと自負している。しかし、研究が進行する中で、申請者の課題の遂行にあたっては、当初は研究の一部としてのみ捉えていたレオパルディのペシミズムという問題を、19世紀文学・思想全体の文脈を踏まえつつ大きく扱う必要があると考えた。そのため、研究全体の完成を見据えた場合、当初の計画以上に進展していると言うことはできない。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目は以下の3つの課題を達成する。 1.作品分析の対象をさらに広げて、『フレデリック・ルイスとそのミイラたちとの対話』等の読解を行う。この作品は、レオパルディの散文中、韻文が冒頭に挿入されている稀有な作品であり、この作品構成の意義を明らかにすることが、本研究にとって重要であると考えられる。 2.レオパルディにおける哲学と詩の協働関係とそのペシミズムとの関係について、昨年度の調査によって明らかになったことを基盤としつつ、他の詩人や思想家とレオパルディとの比較などの観点も取り入れ研究する。 3.ローマ大学における発表を契機として、近年のレオパルディ研究においては、レオパルディにペシミズムを見出すこと自体に否定的な見解が多いという実感を得た。そのため、ペシミストとしてのレオパルディ受容史を、その文学史・思想史上の意義に着目しつつ研究し、この問題について根本的な再検討を行うことで、申請者のレオパルディ像を提示するための基礎づけを行う。
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Research Products
(3 results)