2018 Fiscal Year Annual Research Report
MHD効果を利用した超高熱負荷環境に対応可能なダイバータシステムへの挑戦
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18J20648
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川本 誠 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | Magnetohydrodynamics / ダイバータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、本研究において提案する「部分絶縁フィン構造」が流動場に与える影響を明らかにするため、商用有限要素法コードCOMSOL Multiphysics 5.4を用いた電磁気と流れの連成解析を実施した。解析の結果より当該構造は液体金属自由表面流れの自由表面近傍に流速が大となる領域を形成することが明らかとなった。これらの結果を「部分絶縁フィン構造を用いた電磁力制御による液体金属蛇行流れの液体ダイバータへの適用性評価」と題し、2018年6月27日から28日に滋賀県大津市において開催された第12回核融合エネルギー連合講演会においてポスター発表を行った。 続けて、上記の数値解析より明らかとなった当該概念が形成する高速流れ領域が伝熱性能に与える影響を評価するため、数値解析に伝熱解析を加え、電磁気-流動-伝熱連成解析を実施した。解析の結果より、当該概念による伝熱促進の可能性が示された。加えて、伝熱性能は地場の増大に伴って大となる傾向を示し、これは当該概念の優位性を支持する結果であるといえる。これらの結果を2018年9月16日から21日にかけてイタリアのジャルディーニ・ナクソスにて開催された30th Symposium on Fusion Technologyにおいて「Heat transfer enhancement in MHD free surface flow by controlling the electromagnetic force with fin structure」と題し、ポスター発表を行った。 これまでに実施した解析では、解析の難度と計算コストという観点より自由表面の変形を無視して実施した。しかしながら当該概念の実機適用性を評価するためにはこの自由表面変形の定量化は非常に重要である。これらを実験的に評価するため液体金属自由表面流動試験ループを設計、製作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究概ね当初の計画通りに進行しているため、進捗状況は良好であるといえる。本研究では数値解析と流動実験の両方から、液体金属流動の攪拌機構開発にアプローチする予定となっている。以下が本研究の現在までの進捗状況である。 (1) 数値解析: 数値解析においては上述の通り、現在までに電磁気-流動-伝熱の連成解析において、数値計算に用いる計算格子を微調整することによって収束解を得ることに成功している。地場下での液体金属流動実験については、現在までに試験装置の設計が完了しており本年度4月よりテストランに移行する。 (2) 液体金属流動実験: 流動試験の実施に際しては現在までに(a) 実験体系の考案、(b) 数値解析による流動場予測、(c) 実験装置の設計までが完了している。(a) に際して東北大学金属材料研究所付属強磁場超伝導材料研究センターの所有する無冷媒超伝導マグネットの形成する磁場分布を数値解析より取得した。また、磁場分布の実測を実施し、数値解析の妥当性より得られた磁場分布の妥当性を確認した。(b) では(a)で求めたマグネットの磁場分布を流動解析に導入し、実験によって求められる流動場を予測した。結果より、当該マグネットによって形成される流動場は実験に資するものであると判断した。(c) では液体金属自由表面流動試験流路および電磁ポンプ、不活性ガスサブループからなる実験ループの設計を行った。 現在、試験流路は製作中の段階にあり、本年度4月に水を用いたテストランが、5月に液体金属を用いた流動試験が実施される予定となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の推進方策は以下に示す通りである。 (イ)液体金属自由表面流動実験の実施: これまでに実施された当該コンセプトの実証実験は、用いる超伝導マグネットの形成する磁場の向きが鉛直方向であることより、閉流路体系で実施されてきた。本年度はこの問題を解消すべく、新規に開流路体系での実験のための試験ループを設計、製作した。次年度以降はこの試験ループを用いた液体金属自由表面流動実験を開始し、数値解析では現状、評価が困難である液体金属自由表面の変形などの定量的評価を実施することが可能となる。 (ロ)数値解析の妥当性評価と部分絶縁フィンの形状最適化への移行: これまでに数値解析結果の妥当性評価のために、既往研究によって導出された液体金属自由表面流動の理論解と、数値解析結果との比較を実施しており、両者の良好な一致を確認している。しかしながら当該理論解の適用される体系は極めて限定されており、部分絶縁フィン構造を導入する場合には適用不可である。したがって、当該構造を導入した場合の数値解析結果の妥当性を担保するためには流動実験より得られたデータとの比較が必要不可欠であるといえる。この妥当性評価が完了したのち、研究のフェーズは構造の最適化に移行することが可能であり、当該構造のジオメトリをパラメータとした流動攪拌に向けた最適化を実施することができる。 (ハ)核融合炉システム的観点からの本研究へのアプローチ: 部分絶縁フィン構造の液体ダイバータへの導入のための基礎検討としてダイバータ領域の一部分に限定した領域での調査を実施している。しかしながら当該コンセプトの実機適用性を評価する上ではよりマクロな、炉システム的な観点からのアプローチも必要不可欠である。具体的には、液体金属の導入と排出、トロイダル方向への電流の遮断、炉のオペレーション初期段階の過渡状態におけるシステム運用、などである。
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