2019 Fiscal Year Annual Research Report
心的外傷後ストレス障害における脂肪酸結合タンパク質とドパミン受容体の役割
Project/Area Number |
18J20651
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松尾 和哉 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 心的外傷後ストレス障害 / 脂肪酸結合タンパク質 / ドパミン受容体 / 恐怖記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓型脂肪酸結合タンパク質 (FABP3) 欠損マウスでは不安行動と探索行動異常が認められるが、この行動障害には前帯状皮質における GABA 合成や伝達の異常を伴うことを共同研究グループが報告した (Yamamoto et al., 2018)。FABP3 はドパミン D2 受容体 (D2R) のロングアイソフォーム D2L 受容体 (D2LR) と相互作用することから、D2LR 欠損マウスおよび D2R 欠損マウスにおける情動行動を解析した。その結果、これらのマウスは野生型マウスと比較してストレスに脆弱であり、その原因としてセロトニン神経系の制御異常があることが明らかとなった (Shioda et al., 2019)。心的外傷後ストレス障害を発症した患者の多くが発症後に不安やうつを併発することから、当該疾患の発症メカニズムのひとつとして D2L 受容体を介した神経障害が考えられる。また、心的外傷後ストレス障害の患者においても前帯状皮質における神経活動異常が報告されている。以上のことから、心的外傷後ストレス障害のモデルマウスとして報告 (Yabuki et al., 2018) した FABP3 欠損マウスを用いて、前帯状皮質をはじめとした情動行動を制御する脳領域においてどのようなストレス関連分子が変動しているか探索することで、心的外傷後ストレス障害の神経発症メカニズムの解明につながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
D2 受容体および D2L 受容体欠損マウスにおける不安・恐怖記憶の表現型を解析し、情動行動異常について明らかにした。また、これらの欠損マウスはストレス負荷に脆弱であり、共同研究グループによりこれらの行動障害の根底にある神経メカニズムの一端が解明された。今後、D2L 受容体の相互作用パートナーである FABP3 についても、欠損マウスを用いて情動行動の異常に関わる神経メカニズムを解明する。
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Strategy for Future Research Activity |
FABP3 欠損マウスで神経活動異常があり、情動行動を制御を担う前帯状皮質においてどのような分子が発症に関与しているか明らかにする。また、これらの変動が FABP3 により制御されているか明らかにするため、アデノ随伴ウイルスベクターを用いて FABP3 を発現させ、神経活動異常や心的外傷後ストレス障害様の行動異常が改善されるか明らかにする。
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