2018 Fiscal Year Annual Research Report
一次求心性神経由来因子によるかゆみの慢性化メカニズムの解明
Project/Area Number |
18J20837
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
兼久 賢章 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 慢性掻痒 / 一次求心性神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
一次求心性神経で産生された機能分子は軸索輸送により皮膚側と脊髄後角側の神経終末へ運ばれ各組織の恒常性維持に関わることが徐々に明らかにされている。アトピー性皮膚炎モデルマウスの一次求心性神経においては分子発現が大きく変動していることから,これらの機能分子が皮膚および脊髄後角において恒常性の破綻に寄与していることが想定される。そこで本研究では,慢性掻痒モデルマウスの一次求心性神経で発現増加するNPTX2に注目し,慢性掻痒病態メカニズム解明を目的に検討を行った。 NPTX2の基礎的知見を得るためにNPTX2の時空間的特徴と発現細胞種の特定を試みた。リアルタイムPCR法により掻痒モデルマウスでのNPTX2のmRNA発現量を定量した結果,痒み行動の進行・維持期に有意な増加することが明らかとなった。さらに一次求心性神経の各神経サブポピュレーションマーカーとの多重免疫染色を行った結果,ペプチド性の神経であるCGRP陽性神経との共局在がみとめられた。以上の結果より,慢性掻痒モデルの進行・維持期においてNPTX2がペプチド性神経において発現上昇することが明らかとなった。 次に,慢性掻痒時の皮膚炎および掻痒行動におけるNPTX2の役割について明らかにするために,NPTX2の遺伝子欠損マウスを用いた。NPTX2遺伝子欠損マウスではDCP誘発接触性皮膚炎でみられる痒み行動や皮膚炎が有意に抑制された。これによりNPTX2が慢性掻痒病態の形成に関与していることが示唆された。さらにアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を用いた一次求心性神経への選択的な遺伝子発現法の確立した。次年度はこれらの技術とNPTX2のドミナントネガティブ体やshRNA干渉法を組み合わせることで一次求心性神経での選択的機能制御を目指し,慢性掻痒時の一次求心性神経におけるNPTX2の役割について明らかにしていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目標であった慢性掻痒時の一次求心性神経における遺伝子発現パターンについて詳細に解析し、時空間的特徴および発現細胞種について明らかにすることができた。 また遺伝子欠損マウスにおいて痒み行動の減少という表現型が得られたことから、同因子の慢性掻痒における役割についても示唆することができた。また,次年度の目標を達成する上で重要な一次求心性神経への遺伝子発現技術についても確立できており,おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の遺伝子発現技術を用いて,同因子を一次求心性神経選択的に機能制御することが方法を確立する。具体的には,同因子のドミナントネガティブ体とshRNA干渉法の二つが挙げられる。それぞれの遺伝子を搭載したアデノ随伴ウイルスベクターを作製し,一次求心性神経に発現導入後,慢性掻痒モデルの痒み行動および皮膚炎について検討を予定している。 また,一次求心性神経での発現細胞種解析より,TrkA陽性神経での発現上昇が明らかとなった。このことから,同因子の発現上昇におけるNGF-TrkAシグナルの役割について検討を進める予定である。 最終年度には,慢性掻痒時の同因子の作用メカニズムについて明らかすることを目標としている。既報の研究を踏まえて,同因子が脊髄後角における神経可塑性に関与していることが予想される。そこで,脊髄後角神経回路の中でも痒みの伝達を担うGRPR陽性神経細胞に焦点を当て,電気生理学的に同神経細胞からシナプス入力の記録を行う。これに際して,同神経細胞のの蛍光標識法の確立と電気生理学的特徴について検討を予定している。さらに,慢性掻痒時の同神経細胞の神経活動について検討し,慢性掻痒時の脊髄後角における神経可塑性の有無について検討する予定である。
|
Research Products
(1 results)