2019 Fiscal Year Annual Research Report
地球化学モデリングによる環境循環型建設材料の二次生成相と強度の予測
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18J20929
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
戸田 賀奈子 北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 浚渫土-製鋼スラグ混合土 / 腐植物質 / C-S-H / 地球化学反応モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、様々な産業副産物や廃棄土壌を用いて作成する建設材料を"環境循環型建設材料"と名付けている。その適用促進には強度予測が有効である。今年度は土壌に含まれる有機物が、どのように強度発現の阻害因子として働いているか明らかにするための研究を実施した年となった。前年度に土壌サンプルから抽出した有機物の元素分析やXANESを用いた有機態硫黄の 酸化還元状態、13C NMRおよびGC/MSを用いた炭素の構造やフラグメントの構造解析を実施し、強度発現が阻害されている浚渫土-製鋼スラグ混合土組み合わせに使用されている浚渫土中の有機物の特徴を明らかにした。並行して、実土壌を用いている場合には直接観察がほぼ不可能である硬化に寄与する二次生成物のカルシウムシリケイト水和物、C-S-Hと有機物の固相で生じる相互作用を、C-S-Hの合成試験を用いて理解するための実験を実施した。これは、有機物が混合土の強度発現の阻害方法を明らかにするために必須の実験である。有機物を添加したC-S-H合成試験から得られた固相・液相に対してキャラクタリゼーションおよび溶液組成の分析を行い、有機物がC-S-H生成反応にどのように寄与しているのかを明らかにしつつある。また、有機物のC-S-H生成反応の溶液への影響は、別途Caと有機物の錯体形成定数に関して実験を実施しており、これらは天然の土壌を建設資材としての使用可能性の検討を簡易化する・および使用を拡大するために、必要不可欠な研究進捗であったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は、浚渫土-製鋼スラグ混合土における土壌中に含有される非晶質物質の二次生成物生成への影響の論文化を実施し、浚渫土に含まれる有機物の強度発現の阻害メカニズムの解明に取り組んだ。本年度は、強度発現に乏しい土壌に含まれる有機物の特徴を突き詰め、さらに天然に存在する有機物を模擬した有機物を用い、混合土の強度発現要因のカルシウムシリケイト水和物(C-S-H)の合成試験を実施した。1年次に土壌中の有機物の影響の解明に注力することが、浚渫土-製鋼スラグ混合土を含む土壌を利用した建設材料の利用促進につながると考えた。よって、年次計画を変更し、2年次は:①三次元蛍光およびイオン滴定試験による、アルカリ条件下における有機物による有機物-Ca錯体形成定数定義のための実験②様々な有機物を共存させたC-S-H合成試験による有機物のC-S-H生成阻害影響評価③土壌から抽出された有機物に含まれる硫黄の酸化還元状態・炭素の化学状態の理解(放射光実験)④実土壌を用いた混合土およびC-S-H合成試験の固体粉末に対する走査型透過X線顕微鏡を用いたCの局所化学状態の理解(放射光実験) を実施した。①はデータの取得を終えており、解析段階にある。②は複数の有機物の比較のため、他有機物を用いて実験する予定である。③の放射光実験は終了し、④は、粉末ではなく薄片試料を作成し、走査型透過X線顕微鏡に供する予定である。三年次の前半に、以上を完了させ、論文化する予定であり、研究計画は変更点があるものの、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
R2年度においては、実績の概要で記載した、有機物を添加したカルシウムシリケイト水和物、C-S-H合成試験から有機物がC-S-H生成反応の固相にどのように寄与しているのかを明らかにし、Caと有機物の錯体形成定数を定めることにより、浚渫土-製鋼スラグ混合土の有機物による強度発現の阻害が生じる理由を明らかにする。そして、浚渫土と製鋼スラグを混合した際に生じる地球化学反応をモデル化することを目標とする。同時に、今年度は、H30年度およびR1年度に得られた結果を論文化する年にする。1)浚渫土-製鋼スラグ混合土の強度発現を阻害する土壌有機物の特徴 2)リグニンスルホン酸(天然の有機物に類似する有機試薬)による、合成C-S-Hの構造変化とその生成阻害 3)C-S-Hの生成阻害に寄与する天然有機物の特徴 を出版目標とし、可能であれば、4)アルカリ環境における有機物-Ca錯体形成定数 5)走査型透過X線顕微鏡を用いた有機物による土木材料の強度発現阻害の観察 も発表したいと考えている。
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