2019 Fiscal Year Annual Research Report
不斉アリル位C-H官能基化反応を指向した高汎用性新規2核シッフ塩基触媒の開発
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18J20963
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
文野 優華 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | アリル位CH官能基化反応 / 複核触媒 / 不斉触媒 / 内部オレフィンの活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はオレフィンの末端の置換基の検討を幅広く行った。末端を増炭し、エチル基とするとほとんど反応が進行しなくなることから、アルキル基の導入は困難であることがわかった。その他、分子内に芳香族を導入した基質や、アリルいにベンジル基が導入された活性化された基質などへ適用を行った。なお、基質ごとに最適な反応条件を検討している。 次に、フェニル基を末端に導入したところ、反応が進行することがわかった。条件検討の末、収率70%、不斉収率80% eeまで向上した。六員環を形成する基質でも反応は進行したが、間に芳香環を導入するとフェノールの脱離により原料の分解が起こった。フェニル基上の置換基を検討したところ、電子豊富な置換基では収率、選択性ともに良好であることがわかった。また、N上の保護基を検討したところ、p-Ts基が最も適していることが分かった。 さらに、得られた生成物の絶対立体配置の決定を行った。既存のキラルアルデヒドを誘導体化することにより、生成物に誘導体化し、HPLC測定、旋光度を測定することにより、生成物の立体を決定した。生成物の立体は、メカニズムを特定するうえで重要な情報になる。 本年度の研究により、末端に芳香環を有する基質に適用できることがわかり、本触媒の有用性を各段に広げることができた。従来の触媒では実現できなかった基質が多く、新規触媒の有用性を示すことができた。来年度は更なる基質適用範囲の拡大と、本年度の結果をもとにメカニズムの考察を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
博士2年の前半に行う予定であった基質適用範囲の調査は、十分に達成することができた。本年度は、1. アルキル基を導入した基質3で予想外に収率が低く、基質適用範囲があまり広がらなかったこと、2. 原料をZ選択的に調製することに苦戦しており、検討に多大な時間を要したこと、3. 収率と選択性の両立が難しく、基質ごとに最適な反応条件を検討する必要があったこと、4. 用いるPdのロットが反応の再現性に影響するため、従来用いていたPdの製造中止に伴い、用いるPdを再度検討する必要があったこと、 以上4点に多くの時間がかかったが、自身が開発した触媒による反応系探索であり、必ず対処するべき点であったように思われる。これらを本年度中にすべて解決することができ、自身が開発した触媒系についての知見を得る上では不可欠な、触媒の欠点や限界について知ることができたため、有用であったと評価している。来年度は本年度の知見を活かし、論文投稿を目指す予定である。
また、当初は計画していなかった、絶対立体配置の決定を達成した。その他、メカニズム実験に用いる基質の調製や必要な知識の習得は随時行っており、来年度の頭にはメカニズム実験を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、新規ビススルホキシドシッフ塩基触媒の有用性を示すべく、様々な置換基を有する基質への適用を試みる。 また、新規触媒の高い活性と高い不斉誘起能の仕組みを調べるため、反応のメカニズムを詳細に調査する予定である。具体的には、アリル位C-H結合活性化と競合するWackerアミノ化反応の存在を調査し、反応機構を特定する。また、触媒の線形効果や反応次数についての調査、KIE実験などを行う予定である。 さらに、二つの金属を有する利点や内側の金属の役割についても詳細にしらべ、新規触媒の特徴を明確にしていく。最終的な目標はそれらのデータをまとめ論文に報告することである。
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