2019 Fiscal Year Annual Research Report
高速時間分解磁気光学イメージングを用いたスピン波分光学の構築
Project/Area Number |
18J21004
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
日置 友智 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | スピントロニクス / 磁化ダイナミクス / スピン波 / 磁気光学イメージング / 磁気弾性結合 / ポンププローブ分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、スピン波のバンド構造に起因する幾何学的位相効果を見出すことを目標としている。このためには、スピン波のバンド構造の変調・制御手法が重要となる。本年度は、スピン波のバンド構造を磁性体中の複数の素励起によって変調し、これによるスピン波の伝搬制御を実現した。これは従来微細加工を必要としたスピン波のバンド変調の自由度を高める重要な成果である。以下では、その詳細を説明する。 1.磁壁を用いたスピン波の伝搬変調 磁化の方向が空間的に変化する磁壁の前後では、スピン波の分散関係が異なることが知られている。本研究では、スピン波の分散関係が磁化と波数の相対角度に依存して変化することを利用し、磁壁の前後で磁化の角度が90度変わる90度磁壁にスピン波を入射することで、スピン波の異常な反射屈折則を観測した。この成果はApplied Physics Letter誌に投稿、掲載された。 2.音波を用いた室温・低磁場下のスピン角運動量輸送の促進 磁性体中の音波はスピン波と結合し、混成状態を形成する。スピン波と音波の混成状態は、両方の素励起の性質を併せ持つ。磁性体中の音波はスピン波と比べて寿命が長いため、混成状態は磁性体中を長距離にわたってスピン角運動量を輸送することができる。従来この結合状態の効果は高磁場、低温の領域でのみ観測されていた。本研究では、受入研究機関のRafael Ramos助教授と共同で磁気補償点を調整した磁性ガーネット試料を用いて音波によるスピン角運動量輸送を室温・低磁場下で増強することに成功した。本研究には試料の提供および数値計算、スピン波分散関係の測定で貢献し、共著論文としてNature Communications誌に投稿、掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではスピン波のバンド構造の変調により現れる幾何学的位相効果を観測することを目指す。本年度は、バンド変調の候補である局所的な磁場の変調と、磁気弾性結合によるバンド構造変調を実証することができた。これらの成果と前年度改善したイメージング技術を併用することにより、目標とする幾何学的位相効果の観測系を構築することができる。以上の理由により、おおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度で確立したバンド変調手法と、前年度で開発した磁気光学イメージング法を併用し、磁気弾性結合系における幾何学的位相効果の観測を引き続き目指す。バンド変調には磁気光学結合を用い、弾性波とスピン波の分散関係の交点に生じる磁気弾性波を用いる。観測には、コットンムートン効果とファラデー効果を併用した磁気光学イメージングを用い、幾何学的効果観測への端緒を拓く。
|