2020 Fiscal Year Annual Research Report
社会的養護体制の形成と展開: 日本と諸外国の比較歴史分析
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18J21039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
成澤 柊子 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 里親制度 / 児童福祉行政 / 児童保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は公私機関が関わらない私人間での児童の委託への規制に注目し,19世紀後半から20世紀前半の日米英の取り組みを比較した.公的救済が制限的で,なおかつ婚外子に対する社会的差別が存在していた点で三カ国は共通しており,子供を手放して第三者に委託する私人間委託への需要が広く存在した.しかし,それに対する規制の有無については大きく異なっている.日本では,戦前から里子・貰い子・養子の保護のための全国的な法制が模索されていたが,私生児問題を表沙汰にしてしまうことへの懸念から2度の立法の試みはいずれも挫折し,私人間委託の仲介者の典型だった産婆に対する取締りも不首尾に終わった.さらに民法上の養子縁組に関しても,未成年者の養子縁組に対する裁判所の許可制の導入が戦前に提言されていたが,結局戦後の民法改正に持ち越された.戦前に私人間委託への諸規制が未確立のままであったことは,戦後の児童福祉法での公的里親制度の開始にあたっても人身売買の懸念等を残すことになり,制度の発展に負の影響を及ぼした可能性がある.これに対して,イギリス及びアメリカでは公的機関による里親制度の開始と並行して私人間委託への規制が確立した結果,1920年代にはベビーファーマーと呼ばれるような悪質な養親や仲介者は壊滅状況にあり,第三者による養育の安全性が高められていったのである.これまでの研究成果と併せて考察すると,公私機関による家庭委託と私人間委託の双方において,戦前の日本は法制を作り上げることができなかった.19世紀後半から徐々に里親に関連する諸制度を発展させてきた英米と異なり,民間施設ケアに依存し,第三者による養育の安全性にも疑問が残るという白紙の状態から戦後出発せざるを得なかったことは日本の公的里親制度の不振に繋がった.
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Research Progress Status |
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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