2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18J21141
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 隆大 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | マルコフ過程 / ディリクレ形式 / 大偏差原理 / intersection measure |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度では、複数の独立なマルコフ過程に対して、それらの軌跡の交差の分布を表すランダム測度である intersection measure について研究を行った。 1) Donsker-Varadhan 型の大偏差原理を考察することで、時刻無限大での intersection measure の漸近挙動がそれぞれのマルコフ過程に附随するディリクレ形式の和で表されるレート関数から得られることを示した。また、コンパクト集合を intersection measure で測ったときの量を表す確率変数に対して、モーメント母関数の時間無限大での漸近挙動が、マルコフ過程に附随するディリクレ形式を用いて記述される変分公式と一致することを示した。 2) 1の結果が得られる確率過程の具体例として、空間としてはリーマン多様体やその一般化である曲率次元条件を満たす測度距離空間、またシェルピンスキーのギャスケットを始めとするフラクタル集合、確率過程としてはブラウン運動やその stable-like subordinator を含めることができた。特にこれらの対象において、結果が得られる十分条件は、ディリクレ形式に対応するエルミート作用素のスペクトル次元を用いて記述できることを示した。
1, 2の研究に基づいた論文を学術誌へ投稿し、査読を経て受理された。また、国内のセミナーで発表を行うことで本結果を周知した。 確率過程の交差現象は今まではブラウン運動や安定過程などで主に研究されていたが、本年度の研究はディリクレ形式の一般論の立場からその解析を行う初歩の一つとなり得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交差現象の解析学的立場からの基礎づけを行うために、マルコフ過程の交差現象と、マルコフ過程に付随するディリクレ形式との間の関係を研究しているが、当初の予想に反して本年度だけでは明らかにすることができなかった。 研究調査により、random interlacement と呼ばれるモデルで交差現象が見られていることを知ったが、このモデルの基礎調査しか行えず交差現象の研究まで到達していない。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は以下の推進方策に則って研究を行う。 1)交差現象の解析学的立場からの基礎づけに関して、まずはユークリッド空間上のブラウン運動の交差現象とソボレフ埋め込みの間の関係を具体的に考えることで、一般のマルコフ過程に関しても交差現象とディリクレ空間の埋め込みの間に関係をつけることを目指す。 2)今年度の研究で得られた random interlacement と呼ばれる新たなモデルについて、今年度は基礎調査しか行なうことができなかったので、来年度は交差現象の解析に着手する。
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Research Products
(1 results)