2018 Fiscal Year Annual Research Report
海馬神経回路編成におけるミクログリアによるニューロン選別機構の解明
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18J21331
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
亀井 亮佑 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ミクログリア / 神経新生 / 二光子in vivoイメージング / 海馬歯状回 / 免疫染色 / ミクログリア急性除去 |
Outline of Annual Research Achievements |
成体脳の海馬歯状回では、ニューロンが新生し、選別を受け、既存神経回路に組み込まれ、これが記憶形成に重要な役割を果たすが、この回路再編過程におけるミクログリアの能動的な関与を明らかにすることが本研究の目的である。しかし、従来の組織学的なアプローチでは、新生ニューロンとミクログリアとのダイナミックな相互作用や経時的変化を観察することが困難であり、これを克服するために海馬歯状回のin vivoイメージングの実現が求められていた。 そこで、マウス海馬歯状回の二光子in vivoイメージングを、クロニックに高分解能で行う手法の開発に取り組んだ。まず海馬CA1の網状分子層直上にガラスウィンドウを作成する手術手技を検討し、歯状回への入力線維や歯状回から流れ出る静脈を傷つけることなく、歯状回を観察できる手法を確立した。加えて、観察に最適な光路の屈折率-対物レンズの組み合わせを見出した。これらにより歯状回内のニューロンを高い分解能で、2か月以上の長期にわたり観察できるようになり、蛍光標識した新生ニューロンの成熟過程が描出できることを見出した。また、蛍光標識したミクログリアのイメージングにより、神経新生が起こる領域に限局して、定常状態のミクログリアがラミファイド型のままで、新生ニューロンの貪食を行う様子(選別のプロセス)を捉えることに成功した。今後二種細胞の相互作用を解析していくための基盤が整いつつある。 一方、ミクログリアへの介入実験のために、ミクログリア特異的にジフテリアトキシン受容体を発現するトランスジェニックマウスを導入し、ジフテリアトキシン投与により全脳でミクログリアを除去できる系を確立した。ミクログリア除去に伴い、新生ニューロンの分裂・生存・分化にどのような変化が生じるかについて、分裂細胞の標識や、神経の分化マーカー・アポトーシスマーカーの免疫染色を用いて、組織学的な解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究の目標は、海馬歯状回における新生ニューロンの幹細胞からの増殖、分化、突起形成、神経回路への組み込み、シナプス形成の過程を個体レベルでイメージングする基盤を確立すること、そしてその過程におけるミクログリアの機能的な関与の有無を評価するために、ミクログリアの除去、機能阻害を実現する実験系を確立することであった。 その目標に照らし合わせると、申請者は、個体レベルでの海馬歯状回における新生ニューロンの発達過程のイメージングにおいて一定の解像度を得ることを可能とし、またミクログリアの急性除去システムを確立することに成功し、十分な研究の進展を見せたといえる。 しかし一方で、新生ニューロンとミクログリアとの相互作用に関しては、確立したイメージング手法を応用して今後十分な知見を獲得していく必要がある。また、ミクログリアの除去が神経新生に与える影響については検討を進めている途中であり、その結果を踏まえてより確実なミクログリア機能制御システムを提案し、より詳細にミクログリアの役割を明らかにしていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は、海馬歯状回で新生ニューロンないしミクログリアを経時的にin vivoイメージングすることに成功した。今後はこの手法をさらに改良し、再現性のよい安定したイメージングを実現していく。また、トランスジェニックマウスやウイルスベクターによる遺伝子導入を組み合わせることで、新生ニューロンとミクログリアとの二種細胞同時ライブイメージングを行い、二種細胞相互作用の理解を深める。カルシウムイメージングなどの、より機能的なイメージングにも取り組んでいく予定である。イメージングで得られた情報をもとに、ミクログリアと新生ニューロンとの相互作用に関与する遺伝子の同定も試みる。 一方、ミクログリアを全脳から急性に除去する系を確立してきたが、この系でミクログリアを除去した際に、新生ニューロンの分裂・生存・分化にどのような影響が生じるかについての詳細な解析を引き続き進めていき、ミクログリアがどのように新生ニューロンの組み込み過程を制御するのかを明らかにしていく。得られた結果に応じて、より特異的なミクログリアの機能制御システムの確立を検討し、背後にあるメカニズムにも迫っていく。
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