2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J21384
|
Research Institution | Tohoku University |
Research Fellow |
遠藤 彩瑛 東北大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 西洋美術史 / 古代ローマ美術史 / 古代ローマ壁画 / ポンペイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究活動は主に以下の2つである。 1.古代ローマ初期帝政期における神話風景画に関して具体的な神話的モチーフの詳細な比較を行い、これまで指摘されてきた人物等の反復表現が異なる主題にも適用されていた可能性を指摘した。2.自然災害などの大きな変化が美術表現にも影響を与えた可能性について調査を行った。 1に関して、当初は風景表現を含むコピー行為全体を論じる予定であったが、細部を再度比較したところ、これまで先行研究で論じられていた2組の神話風景画は必ずしも同じ型を用いたコピーであると断定するのは難しいと考えられた。そのため、まずは具体的な神話的モチーフの反復表現に関する先行研究について再考する必要が生じた。 現地遺跡(ポンペイ等)でのフィールドワークや博物館・図書館等(ローマ国立考古学博物館マッシモ宮、ナポリ国立考古学博物館、ナポリ大学等)では作品調査および資料調査を行った。また、ナポリで開催された国際ローマ壁画学会(AIPMA)に参加し、最新の発掘調査結果や研究動向についての情報交換を行った。また、壁画のコピーや反復表現に関する研究で著名なナポリ東洋大学のイレーネ・ブラガンティーニ教授から研究指導を受けた。帰国後はその調査結果についてあらためて精査し、第69回美学会全国大会において神話的モチーフの反復表現について口頭発表を行った。 2に関しては、2017年度末にヴェネツィア大学において開催された国際シンポジウムInternational Workshop on Japanese Cultural Studies において発表した”L’effetto degli catastrofi naturali sulla espressione artistica a Pompei”について、現地で受けたフィードバックをもとに内容を精査し、ポンペイにおける地震後の表現に関する論文を執筆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は古代ローマにおいて室内装飾の自然描写に求められたものについて明らかにすることを目的としている。そのため初年度はヴェスヴィオ山周辺の作例を中心に、壁画がなんらかの型を用いてコピーされることによって生産されていたという説を検証するとともに、反復表現されるなかで取捨選択される風景描写に着目することで、自然描写に対する意識を明らかにすることを目的としていた。しかし上述の通り、細部の再比較によって壁画のコピーに関する議論が同主題・同構図の神話画のみに当てはめられていたという先行研究に矛盾が生じたため、当初予定していた風景表現を含むコピー行為全体を論じるのではなく、まずは風景表現のなかに描きこまれた具体的な神話的モチーフの反復表現に関する検討を行う必要が生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
風景に描かれたモチーフの反復表現に関しては、以下のように国内外2件の研究発表が2019年度中に内定している。イタリア言語・文化研究会159回例会、XIV convegno internazionale AIPMA(第14回国際ローマ壁画学会)。本年度においては、神話風景画における人物等の表現が主題によらず反復されていた可能性を指摘することができた。この傾向が、風景表現に関しても見いだせることを検討していく。
|
Research Products
(2 results)