2018 Fiscal Year Annual Research Report
相模トラフプレート間地震の発生履歴・再来過程の解明
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18J21407
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
小森 純希 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 古地震学 / 相模トラフ / プレート沈み込み地震 / 関東地震 / 海岸段丘 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度において、相模トラフプレート間地震(関東地震)の発生履歴・再来過程の解明という課題に関し房総半島南端部に分布する沼段丘を対象として地形地質学的調査を実施した。本年度の研究は、地形地質調査により沼段丘の定量的な空間分布と離水年代をより詳細に導出することを目的とした。研究手法として、(1)標高数値地形モデル(DEM)をデータソースとして使用した海岸段丘地形の数値的検出手法の開発及び調査地域への適用、(2)反射法レーザー探査(GPR)測量による地下堆積構造調査、(3)ハンドオーガー・ジオスライサー掘削を用いた段丘堆積物の採取、並びに(4)放射性炭素年代測定による段丘堆積物年代測定を実施した。本年度の研究の結果、段丘の空間分布について従来よりも定量的かつ空間的に連続なデータを得ることができた。また、堆積物採取と年代測定調査により、従来調査が行われていなかった地域で新たなデータを取得することに成功し、段丘形成年代推定の信頼性を向上させることができた。これらの成果により、今後実施する計画である相模トラフプレート間地震の発生履歴の解明を議論することが可能になった。 本年度の成果は、当初計画していた内容のうち、段丘形成年代、段丘地形分布の推定に関する地形地質調査をほぼ予定通りに遂行した。一方でこれらの地形地質調査結果をもとにして行う予定であった相模トラフ沈み込み域の地震繰り返しと地殻変動履歴の再現を目的とした物理モデリングの構築に関しては、地質データ取得の遅れもあり着手されなかったため、次年度で行う研究の目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度当初の計画では、地形地質学的な段丘調査と、物理モデリングに基づいた海岸段丘形成履歴についての解析を行おうことを目標としていた。はじめに地形地質調査に関しては、当初計画していた堆積物試料採取および年代測定と地中レーダー測量による堆積構造調査を想定通り行うことができた。フィールド調査による堆積物試料採取と年代測定は、調査地域南西岸に分布する平砂浦海岸において実施され、当初の予定通り十分量の試料採取に成功した。当地域は地表面に海岸段丘地形が残存しないために従来当地域の隆起地形調査の対象からは外されていたが、今回の調査では、研究開始時に予想されたとおり地下構造に隆起痕跡が残されていることが示された。また、採取した試料の年代測定結果は、他の調査地点で得られた結果と整合的な値を示し、本研究の解析結果の信頼性を大きく向上させた。 また、標高数値地形モデル(DEM)を使用した定量的な海岸段丘地形の検出と分布の計測手法の新たな開発も同時に行った。この結果、従来の定性的な段丘調査手法に客観性を与えることができたほか、本手法を沼段丘に適用することで、過去の関東地震による地殻変動履歴の詳細な推定に成功した。 以上の経過から、本年度の研究はおおむね計画通りに進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の進行によって、房総半島南端部に発達する海岸段丘の分布状態、および形成年代について従来とは異なる新しい知見がもたらされた。次年度の研究実施においては、前述した目標を達成するために、地形地質学的な段丘調査と、物理モデリングに基づいた海岸段丘形成履歴についての解析を行う計画である。 地形地質学的調査では、本年度に行った調査地点に追加してフィールド調査を実行し、堆積物試料採取と年代測定を行う。この調査は、沼段丘の離水年代推定のさらなる正確化を目的とするものである。調査を行う地域は同じく房総半島南端部の南西岸に位置する平砂浦低地であり、本年度試料採取と測定を行った調査測線を海岸方向へ延長させ、より新しい時代に離水したと予想される土地の年代推定を試みる。この調査の結果として、これまで調査された段丘面の年代推定をより精密に求め、後述する物理モデリングに適切な拘束条件を与えることが期待できる。 物理モデリングにおいては、地形地質調査によって新たに取得された地殻変動履歴に関する拘束条件をもとにして、相模トラフプレート境界周辺の地殻変動を再現するモデルを構築する。この解析は、地形地質記録から行う将来の地震活動の予測を、より定量的に行えるようになることを目的としている。解析には汎用有限要素解析ソフトウエアCOMSOLを使用する。地形地質調査結果から、物理モデルに与える境界条件を精密に議論し、過去1万年間にわたる地殻変動履歴を包括的に説明できる物理モデルを構築することが目標である。
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Research Products
(1 results)