2018 Fiscal Year Annual Research Report
デュアルコム分光法を用いた偏光計測装置の開発と生体分子計測への応用
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18J21480
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Research Institution | Keio University |
Research Fellow |
住原 花奈 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | デュアルコム分光 / 偏光計測 / 光周波数コム / 光物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、偏光デュアルコム分光法を物性計測に応用することである。偏光デュアルコム分光法の有する「圧倒的な高周波数分解能性」、「高速計測を活かした積算による高い信号雑音比」、「光源のコヒーレント性」を利用することで、これまでにない物性計測が実現する可能性がある。本年度は、電気光学変調器(EOM)を用いた新しい偏光デュアルコム分光法を開発し、原理検証実験に成功した。 開発した手法の測定原理は以下のようである。まず、1つ目の光周波数コム光源は偏光子により水平な直線偏光とする。2つ目の光源は試料を透過させ、未知の偏光状態となっている。これら2つの光周波数コム光源をビームスプリッターで重ね合わせ、1/4波長板、EOM、1/4波長板、偏光子を透過させ、検出器へと導く。本手法を用いると、デュアルコム分光で得られる信号の間に、偏光情報を表すサイドバンドが出現する。偶数次のサイドバンドが試料を透過した光の水平成分の電場振幅、位相の情報を含み、奇数次のサイドバンドが垂直成分の電場振幅、位相の情報を含む。本年度は、まず、上記の光学系で得られる信号を定式化し、解析法を開発した。原理検証実験としては、試料を1/4波長板として回転させ、既知の偏光状態を作り、それを本手法で正しく計測できるかどうかを確かめた。その結果、本手法で正しく偏光が決定できることを確かめられた。 また、測定系の安定性を評価するために、計測で得られる光の振幅、位相の不確かさを見積もった。不確かさを小さくするために、データ取得の際の位相補正のアルゴリズムを見直した。これらの基礎評価は偏光デュアルコム分光法を定量的な物性計測に応用するためには極めて重要である。現在、この基礎評価をもとに、本手法の論文化を進めている。本手法を用いれば、偏光依存性(複屈折性)を持つ試料に対し、その固有軸に沿った複素屈折率を求めることが可能になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の内容は申請書に記載した平成30年度の計画にほぼ沿った形になっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は開発手法の原理検証・精度評価を行い、手法の有用性を示すことを物性計測への足掛かりとしたが、次年度以降、実際にポリマーなどの高分子材料の異方性を計測することで、本手法の重要性を示すことを最終目的とする。まずは、開発手法の論文化を急ぐ。次に、本年度では「既知」として扱っていた試料の厚みを実験から求めることを試み、その知見を活かしてポリマーなど物性計測をする。
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Research Products
(3 results)