2019 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的な変動蛋白質解析による、難治性乳がんTNBCの薬効予測バイオマーカーの同定
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18J21507
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
芳賀 優弥 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | Triple negative乳癌 / ダサチニブ / Akt/mTOR経路 / 上皮成長因子受容体 / p62 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、難治性乳がんTNBCにおける個別化医療の実現に向け、治療法が有効な患者のみを選定可能とする薬効予測バイオマーカーの確立を目指している。当該年度は、昨年度に明らかとした、ダサチニブが示す細胞障害性は、標的分子Srcの下流経路であるAkt/mTOR経路に依存すること、感受性を規定しうる因子としてEGFRが減少することなどに着目し、これら関連分子の変動、ダサチニブ抵抗性細胞株において、Akt経路を阻害した際の影響について評価を実施した。まず、感受性株におけるEGFRの発現減少がリソソーム系により分解されることから、Akt/mTOR経路の下流に位置し、中でもリソソーム系により分解されることが知られるp62(SQSTM1)の発現変動を評価したところ、EGFRと同様に感受性株のみにおいて発現減少が認められた。さらに、感受性株においてのみダサチニブによるAktの活性低下が認められたことから、抵抗性株においてAkt、またはmTOR阻害が、ダサチニブによる細胞障害性に及ぼす影響を評価した。その結果、抵抗性株において、Akt阻害剤とmTOR阻害剤は、ダサチニブによる細胞障害性を有意に増加させることが示された。以上の解析結果より、TNBCにおけるダサチニブに対する感受性は、Akt/mTOR経路に依存しており、一方、抵抗性株においては、Akt/mTOR経路を阻害することで、ダサチニブに対する感受性を増加させることを明らかとした。すなわち、Srcの下流経路として知られるAkt/mTOR経路の制御に関して、感受性株・抵抗性株で異なる制御メカニズムが考えられた。今後、感受性・抵抗性株において、異なるAkt/mTOR経路の制御メカニズムさらに昨年度に引き続き明らかとしたEGFRおよびp62の減少の関連を明らかとすることで、ダサチニブの感受性を規定するバイオマーカーの同定につながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、複雑な病態ゆえに未だ有効な治療法が見出されていない難治性乳がんTNBCにおける個別化医療の実現に向け、治療反応性と変動蛋白質の網羅的解析との連関解析を図り、TNBC 患者群の中で、治療法が有効な患者のみを選定可能とする薬効予測バイオマーカーの確立を目指し、研究を推進している。第2年度は、昨年度に見出したダサチニブ感受性におけるEGFRのリソソーム系を介した減少に関して、詳細な検討を進めるため、リソソーム系を介して、タンパク質の分解が知られるp62に着目した。その結果、感受性細胞株においてのみ、p62がEGFRと同様に減少することを見出した。さらに、p62の上流に、Akt/mTOR経路が存在することから、昨年度までに明らかとしたダサチニブがTNBC細胞株において、PI3K/Akt経路依存的な細胞障害性を示すという知見と合わせ、ダサチニブ抵抗性細胞株における、Akt経路の役割解明を試みた。その結果、Aktおよびその下流分子であるmTOR阻害がダサチニブ抵抗性を克服できる可能性を見出した。現在、EGFRとp62の減少という現象を足がかりに、感受性と抵抗性を規定する因子の同定に着手しており、ダサチニブの薬効予測バイオマーカーの確立に向けて、当該年度は期待通りの研究の進展が認められたと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに見出した、ダサチニブ感受性株においてのみ認められるダサチニブによる上皮成長因子受容体(EGFR)やp62の発現減少の詳細なメカニズムについて、感受性株・耐性株を比較解析することで、バイオマーカーとなりうる分子の探索を図る。さらに、感受性株のみならず、初期耐性メカニズムを紐解く上でも、感受性株に短期間ダサチニブを曝露することで得られる擬似的な薬剤初期抵抗性細胞の作成を予定している。網羅的な分子変動を解析するため、感受性・抵抗性株の薬物刺激前後の分子変動ををLC/MS-MS法やRNA-Seq法による網羅的解析の実施し、網羅的な解析により絞り込んだ候補分子については、 詳細なバイオマーカーとしての有用性を検討する予定である。
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