2019 Fiscal Year Annual Research Report
ヒッグス粒子と第二世代フェルミオンとの結合定数測定による標準模型の検証
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18J21699
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川口 智美 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ヒッグス粒子 / LHC-ATLAS実験 / 湯川結合定数 / μ粒子検出器 / トリガー |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒッグス粒子のμ粒子対崩壊(H→μμ)の探索のために、本年度は以下の2つを行なった。 1)信号事象および背景事象のμ粒子対の不変質量分布のモデル化 実データを用いたμ粒子対不変質量分布の125 GeV付近のピーク探索において、不変質量分布を背景事象および信号事象のモデル関数でフィットするため、それらのモデル関数の決定は重要である。信号事象のモデル関数は、信号事象のシミュレーションを用い、前年度に確立した補正(FSR補正)を導入して得た不変質量分布に対してDouble-Sided Crystal-Ball関数をフィットして決定した。背景事象のモデル関数は、背景事象のシミュレーションと信号領域周りのデータの不変質量分布の比較やFSR補正の影響を評価することで決定した。 2)すべての系統誤差の見積もり Zボソンのμ粒子対崩壊のシミュレーションとデータを用いてFSR補正前後の不変質量分布の検証を行うことでFSR補正による不変質量分布への系統誤差が十分に小さいことを確認した。さらに、不変質量分布のモデル化やμ粒子の効率など全ての系統誤差の見積もりを完了させた。 1)と2)の結果を用いて、H→μμ探索の暫定結果(信号強度=0.5±0.7)を得て、EPS-HEP2019にて公表した。また、最終結果導出に向け、ヒッグス粒子が弱ボソンとともに生成する過程などの追加、2つのグルーオンを始状態として生成する過程における事象の分類の最適化、より統計誤差を小さくする背景事象のモデル化などさらに解析を改良し、2020年3月の日本物理学会にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度に確立したFSR補正を導入し、信号事象および背景事象のμ粒子対の不変質量分布のモデル化およびすべての系統誤差の見積もりを完了させた。また、暫定的な事象の分類、背景事象のモデル関数などを用いてEPS-HEP2019にてH→μμ探索の暫定結果を公表した。その後、さらに解析を改良し、詳細を詰めることで、2015年から2018年にLHC-ATLAS実験で取得した積分ルミノシティ139 /fbのデータを使用したH→μμ探索の最終結果を導出する準備を完了させている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、確立した手法の妥当性検証を共同研究者たちと最終確認し、2015年から2018年にLHC-ATLAS実験で取得した、重心系エネルギー13 TeV、積分ルミノシティ139 /fbのデータを全て使用し、μ粒子対の不変質量分布を測定してH→μμ探索の最終結果を導出する。また、得られた信号強度が、真空に満ちるヒッグス場がμ粒子に質量を与えるという標準模型の質量起源の描像と合致するか検証する。合致しない場合、μ粒子の質量起源を説明する新しい模型の探求に道筋をつける。
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Research Products
(1 results)