2018 Fiscal Year Annual Research Report
司法積極主義の比較政治学的研究―イタリア憲法裁判所を手掛かりに―
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18J21730
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井関 竜也 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 政治学 / イタリア政治 / 司法政治 / 憲法裁判所 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、自身の修士論文を通じて得られた「憲法裁判所が通常司法官僚制と相互に抑制均衡する関係にある」という知見をもとに、憲法裁判所は中央政府に対して自律的な部門を抑制し、むしろ中央政府を擁護する役割を果たしているのではないかとの問題設定に基づいて、研究を進めた。具体的には以下の進展があった。 第一に、修士論文の内容をより充実するべく、当時のイタリア語によるテクストの読解・検討を進めた。この成果については、研究会で報告の機会を得て、主張について一定の支持を得るとともに改善点についての助言を得た。これをもとに、現在も内容の検討が進行中である。 第二に、国が憲法裁判所への訴訟提起を通じて、党派性の異なる州政府を統制しているのではないかとの仮説を立て、これを検証した。具体的には、2002年以降のイタリア憲法裁判所における、国が州法を対象に主要問題型合憲性審査を提起した時期・対象となる州についてデータを収集し、国がどのように訴訟対象を選んでいるのか、その選択によって判決の帰結にどのような影響があるのかを分析した。この結果については、学会発表の査読に通過し、2019年度中の発表が予定されている。 以上の研究成果はいずれも、憲法裁判所を中央政府を抑制する分権的統治機構であるとしてきた従来の研究に反し、むしろ憲法裁判所が中央政府を擁護する集権的な役割を果たしているのではないか、との可能性を指摘するという点で新規性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度については以下の点で進展があった。 第一に、従来の研究では中央政府を抑制する分権的機関であるとされていた憲法裁判所が、むしろ中央政府を擁護する集権的機関であるとする、博士論文の主軸となる中心仮説を導出できたことである。第二に、この中心仮説に適合する形で、(1)憲法裁判所と通常司法官僚制との相互抑制関係、(2)憲法裁判所を通じた中央政府による州政府の統制という、二つの研究が進展したことである。第三に、これらの成果について研究発表の機会を得られたことである。 一方、修士論文の内容については、再検討に時間がかかり、二つの研究を並行する状態となったため、論文としての公表は遅れてしまっている。ただし、学会発表の機会を得るなど、他の進展があったため、全体としては「おおむね順調に進展している」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに進展している研究の公表を目指す。(1)憲法裁判所と通常司法官僚制の関係についての事例研究は、内容を再検討のうえ、論文としての公表を目指す。(2)憲法裁判所を通じた統制については、学会発表で得られた助言などをふまえて、これも今年度中に論文としての公表を目指すものとする。 これらとは別に計画している研究があり、これに向けて5月以降にデータ収集と分析を随時行っていく予定である。
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Research Products
(2 results)