2019 Fiscal Year Annual Research Report
セロトニンが側坐核スパインに作用する新機序の光操作による解明
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18J21753
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田尻 美緒 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | シナプス可塑性 / セロトニン / 記憶・学習 / 側坐核 / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
学習や記憶などの脳高次機能を形成するシナプス可塑性の基盤にはポストシナプス構造である樹状突起スパインの形態変化があると考えられるようになってきたが、その詳細については不明な部分が多い。 昨年度までに、情動学習の中枢の一つとされる側坐核において光遺伝学を用い脳スライス上でセロトニン濃度変化を再現し、生理的なセロトニン信号がスパイン形態可塑性を増強することがわかった。このセロトニン効果は側坐核に発現するGs 共役型セロトニン受容体4の薬理阻害により抑制された。 本年度はセロトニンによる側坐核スパイン形態可塑性増強がどのような機能的役割を担うか探索するため、セロトニン受容体4に対するshRNAを導入し、側坐核セロトニン受容体4遺伝子のノックダウン実験を行った。うつモデルマウス作製に用いられる社会的敗北ストレスをマウスに負荷すると、側坐核セロトニン受容体4のノックダウンしたマウス群では対照マウス群に比べ、ストレス負荷後の社会性行動がより低下し、抑うつ状態が亢進することが示唆された。 また、セロトニン神経を制御する可能性が考えられる前頭前皮質について、スパイン形態可塑性を修飾する機序の調査を進めた。社会的敗北ストレスを与えたうつモデルマウスの前頭前野脳スライスではスパイン形態可塑性が低下していることがわかった。さらにうつモデルマウスに対して即効性抗うつ作用があるケタミンを腹腔内投与すると、この可塑性低下が回復する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の推進方針であったうつモデルマウスの作成、自発活動量や不安行動を評価する行動実験系の確立、側坐核と前頭前皮質のスパイン形態可塑性を修飾する機序の探索を進めた。 セロトニン受容体4に対するshRNA発現プラスミドベクターを作製し、側坐核におけるセロトニン受容体4をノックダウンすることにより抑うつ状態が亢進する可能性を見出し機能的役割についての示唆を得ることができた。さらに前頭前野スパイン形態可塑性が社会的敗北うつモデルマウスで低下すること、これがケタミンで回復することを示した。 これらの成果は樹状突起スパインの形態変化の新たな機序を解明する手がかりとして有用であり、研究課題遂行に関しておおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
セロトニン作用、ケタミン作用について場所特性や分子機序をを引き続き調査し、必要に応じて下流シグナルの細胞内イメージングも行う。 さらに側坐核と前頭前皮質のスパイン形態可塑性の増強効果と機能的役割の対応をとるために探索を進める。学会での発表と論文投稿を行う予定である。
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Research Products
(1 results)