2018 Fiscal Year Annual Research Report
言語類型論的アプローチに基づく南琉球八重山語西表島船浮方言の記述文法書作成
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18J21798
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
占部 由子 九州大学, 人文科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 南琉球八重山語 / 記述文法 / 言語類型論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、①記述文法で取り扱う地点の再検討、②音韻論・形態論を中心とした現地調査、③前年度までの研究成果を元に査読付き口頭発表に応募し、報告するという3つを目標とし、概ねこれらを達成した。①について、当初の計画で記述の対象とする予定であった西表島船浮方言は、話者数が極端に少なくかつ高齢であることから、続投は困難であると判断した。そのため、近隣の石垣島白保集落を対象とし、記述文法書の作成に取り組むことに決定した。白保集落における調査は、他の研究者とのデータ共有が進んでおり、協力も得られるため、調査地点の変更をしても計画の実行性は損なわれない。②の現地調査について、2018年度は動詞形態論を中心に調査を行い、動詞の屈折パラダイムに関する網羅的なデータを得ることに従事した。また、2019年度以降に通方言的な法則性を導くための多地点調査を計画しているため、その準備として近隣の石垣島真栄里方言や大浜方言の調査を実施した。これは、Shimoji (2018) が示す焦点標識と情報構造の関連に加え、かりまた (2011) が指摘するモダリティ・文タイプを踏まえた調査を行い、2地点を比較し、今後の方針を検討するためのものであった。よって2018年度は白保方言についても周辺集落の方言についても、次年度以降の調査のための基盤を築いたといえる。③の研究成果の報告は、西表島船浮方言の人称代名詞について、国内、国外で発表することで達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の調査は、1週間前後の短期的なものが主であり、1ヶ月以上の長期的な調査を行えなかった。そのため、調査時の時間的制約により、PC語根から形成される形式など動詞以外の形態論に関する調査を実施できていない。また、記述文法の作成に必須である自然談話の書き起こしも行えていない。年度内に行うべき目標に向けて取り組んだが、現地調査に関しては不十分な点がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、2018年度の調査結果を元に、形態論についてまとめ、記述文法書の作成に着手する。併せて、現地調査で自然談話の書き起こしを行いながら構文論の項の骨子を組み立てていく。また、類型論的な観点に基づく研究を実行するため、2018年度までに調査をした焦点標識と文タイプ・モダリティの関連についての成果を発表し、八重山語内外の多地点でさらなる調査を行う。
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