2019 Fiscal Year Annual Research Report
Fundamental study on kinetics of mechanochemical reaction using experimental and computational approaches
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18J21860
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
廣沢 文絵 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | メカノケミカルプロセス / 粉砕 / 機械的エネルギー / 離散要素法 / 遊星ボールミル |
Outline of Annual Research Achievements |
メカノケミカル反応に限らず、粉砕やメカニカルアロイングなどの物理的処理プロセスは、多様な物性をもつ粒子を得ることを目的に、鉱業から製薬まで幅広い分野で工業的に用いられている。このようなプロセスでは、大きな機械的エネルギーが粒子に作用するため、処理中に粒子直径および個数が刻々と変動する。これらの変動により、処理装置内の粒子の挙動が変化し、粒子に作用する機械的エネルギーに大きな影響を及ぼすと考えられる。そこで本年度は、物理的処理プロセスにおける粒子直径および個数の変化が粒子に作用する機械的エネルギーに及ぼす影響を数値計算により検討した。計算対象のプロセスには、遊星ボールミルにおけるシリカ粒子の粉砕現象をモデルとして採用した。数値計算には離散要素法(DEM)を用い、粒子直径、粒子個数、粒子充填量およびボール直径を変化させて、遊星ボールミル内の粒子およびボールの挙動をシミュレートした。また本研究では、粒子に作用する機械的エネルギーとして、粒子衝突時の消散エネルギーに着目した。さらに、粉砕が進行するエネルギーの閾値を考慮し、粉砕の進行に用いられる正味の粒子の機械的エネルギーを算出した。その結果、粒子充填量に比べ、粉砕の進行に伴う粒子直径および個数の変動が機械的エネルギーに大きく影響することが示唆された。このことから、粉砕の進行度の影響を受けることなく粒子に常に大きな機械的エネルギーを作用させるためには、粉砕の進行に合わせて使用するボール直径を変更することや、容器回転速度を変更する必要があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究において、粒子の物理的処理プロセスにおける粒子径変化に伴う機械的エネルギーの変動を明らかにすることができ、大きな粒子径変化が起こるメカノケミカルプロセスの解析においても反応速度式を決定するための基礎的な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究で、遊星ボールミルにおけるメカノケミカル反応を中心としたメカノケミカルプロセスに関して、熱統計力学的な観点からマクロな解析を行い、粒子に与えられる機械的エネルギーの関数として「メカノケミカル反応の反応速度式」の決定手法を提案した。しかし、マクロな解析により決定した反応速度式は、反応装置内の粒子の速度分布に大きく影響されることから、例えば異なる大きさのボールを充填した場合など、幅広いメカノケミカル反応に適用するのは困難と考えられる。そこで次年度では、メカノケミカル反応の反応速度式をより一般化するために、メカノケミカル反応に対してミクロな現象を考慮して解析を行う。具体的には、反応物粒子の衝突時のイオンおよび原子の拡散現象に着目して解析する予定である。メカノケミカル反応に限らず、一般的な化学反応はイオンや原子の拡散を経て反応が進行することから、拡散量の増加により反応速度は大きくなる。また、イオンや原子の拡散量は、粒子衝突時のエネルギーや粒子の接触面積とともに大きくなると考えられる。そこで、数値計算を用いて、遊星ボールミルにおける容器回転速度やボール直径および個数を変化させた場合の粒子衝突時のエネルギーおよび粒子の接触面積を求めることで、イオンや原子の拡散量の変化を推算する。さらに、粒子の拡散現象を反応速度式に組み込むことにより、反応速度式をより一般化できると考えられる。さらに、これまで蓄積してきた遊星ボールミルにおいて粒子に作用する機械的エネルギーの数値計算結果を活用し、粒子に効率よくエネルギーが作用する運転条件を検討する。具体的には、容器回転速度やボールおよび粒子の直径、個数、充填量による粒子の機械的エネルギーの変化を検討するだけではなく、ボールの密度や容器の形状がエネルギーに与える影響についても詳細に検討する予定である。
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Research Products
(3 results)