2018 Fiscal Year Annual Research Report
Ritual as the "Shu" and its Governance: a study on Xunzi and Confucian Thoughts of Arts
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18J21916
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
張 瀛子 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 荀子 / 儒教 / 中国思想 / 礼 / 術数 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究実績については主に五つあげられる。(一)課題の荀子の術思想について、第一年度は計画通り進行しており、第二年度に予定される成果の一部の発表に向けて準備をしている。(二)本年度で筆者は博士課程卒業に必要な単位数をほぼ全て修得し、講義に参加するなか、課題と同時進行で荀子に関する新しい問題意識についても考察を行った。歴史上の荀子の解釈は単なる諸子学では十分把握しきれないものであり、中国思想の展開の本質的部分と深く関わっていた。特に清代における荀子の再評価は当時の考証学および「漢学」と重要なつながりがあり、近代の直前にある清代思想を理解するに大きな意味があることを、2018年7月の中国社会文化学会において報告した。報告にあたる論文は同学会学会誌に投稿し、現在審査中である。また、清代初期の『荀子』注釈を取り上げた論文を東京大学中国思想文化研究室の『中国哲学研究』に投稿し、査読を経て次号に掲載する許可を得た。(三)8月28日から8月30日に韓国成均館大学にて開催された第二回「東亜博士生国際儒学論壇」に出席し、東京大学の一員として発表と交流を行った。筆者の発表は明治時代の日本の儒教認識をテーマとし、近代東アジア思想の展開における日本の影響を、中国語圏および韓国の若手研究者に向けて強調した。成均館大学・ソウル大学校・北京大学・復旦大学・中山大学・台湾大学からの多くの学者と有益な交流ができ、今後の研究ネットワーク構築に向けて一歩踏み出せたと考えられる。(四)筆者の修士論文が第四回中村元東洋思想文化賞を授与された。授賞式は10月20日に中村元記念館(島根県松江市)で行われ、その折には優秀賞受賞者として特別講演を行った。(五)片倉望氏の荀子思想研究論文「『性僞之分』と性悪説――荀子思想の分裂と統一」の筆者による中国語訳が中国の『国学学刊』(2018年第1期)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『荀子』における「術」としての礼の政治面について、計画書に記載した通りの文献資料を読み進めていくうち、『戦国策』に特に注目するようになった。『戦国策』は、戦国時代における各国の間の軍事や政治抗争にまつわる説話の集合である。その中で活躍するのは後に縦横家と称される人たちであるが、彼らのいわば「権謀術数」とも言える知的斡旋、とりわけ話術に関する記述には、荀子の礼思想と言語観に共通する面があると考えるに至った。そして、このような術士たちの言語観およびそれと関係している荀子の礼思想は、文学を通じて、漢代にも引き継がれている可能性があることに注目している。中国思想において「礼」と「文」は常に互換可能であり、両者は「教」と結びつくことによって強い政治的な意味を帯びる。荀子の礼思想の政治面は、従来、一種の条例的規範として法家の「法」との親近性が注目されてきた。しかし、このように戦国時代の話術から統一国家における政治的提言、文学と経学などという文脈において考察することによって、荀子の礼思想をより複眼的に読み直すことは可能だと考えるようになった。第二年度の研究実践及び本課題の最終結果には、このような政治的話術や言語観、文学理論と荀子の礼との関係を具体的に反映させるつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度の研究は三点を軸に推進しようと考えている。(一)第一年度の研究によって得た課題の成果を発表する。(二)課題の第二年度の研究計画については、本来の第三年度の計画と融合した形で推進しようと考え直している。本来の計画上、第二年度は主に荀子の術思想の戦国時代の方術との関わりを、第三年度は荀子の術思想と漢代学術との関係を考察する予定であった。一方、第一年度の研究を通じて、戦国時代の方術思想は漢代思想とは資料的に重なる部分が多く、もとより両者は深い関わりがあり、分けて考えてはならないと考えるに至った。したがって、荀子と漢代の儒教、黄老思想や神仙思想との関係を、『史記』『漢書』『後漢書』や讖緯などの文献及びそれらに関する研究を通じて考察しようと考えている。(三)中国思想史上の荀子をめぐる議論についての考察をも同時進行する予定である。すでに考察の対象となっている清代は、考証学の隆興により、古代資料に関する様々な文献学と思想面の調査が行われ、その中には荀子に関係するものが多く含まれており、筆者の課題にとって有益な資料となっている。これらを本課題の礎とすると同時に、清代の荀子をめぐる言説の背後にある問題を取り上げ、近代の大きな思想変化の前段階において、荀子思想がどのように扱われていたのかを考察する予定である。
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Research Products
(2 results)