2019 Fiscal Year Annual Research Report
革命、内戦期ウクライナの国制史的研究―中東欧における「一民族一国家体制」の成立
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18J21929
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 優樹 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ウクライナ / ロシア革命 / ロシア内戦 / ロシア帝国 / 民族自治 / ナショナリズム / 連邦制 / 第一次世界大戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度の研究計画は、①先行研究の整理、②国内外での史料調査、③学会発表・論文投稿、であった。 ①については、多言語で書籍として刊行された二次文献を科学研究費で購入するとともに、国内外の雑誌に論文として掲載された最新の研究成果をフォローした。 ②については、「若手研究者海外挑戦プログラム」を利用し、2019 年4 月23日から9 月 17日までの148 日間、キエフ・モヒーラ・アカデミー国立大学歴史学科のスカルスキー上級講師の指導のもとで一次史料の収集を進めた。具体的には、本研究が扱う時代のウクライナ中央政府省庁についての史料を所蔵するウクライナ政府・行政最高機関中央国立文書館(ЦДАВО)、キエフ州の地方行政機関やその他の公的・私的組織の史料を所蔵するキエフ州国立文書館(ДАКО)で未刊行史料を、ウクライナ国立ヴェルナツキー図書館では新聞などの刊行史料および二次文献を調査した。 ③については、権威ある国際的な専門誌Kritikaに投稿した英語論文"Multiple Paths to Autonomy: The Moderate Ukrainians in Revolutionary Petersburg"が査読を通過した。また、『ロシア東欧研究』47号に査読付き論文「1918年のウクライナにおける国制構想と外交路線の相互関係:独立と連邦制」が刊行された。また②で述べたウクライナにおける史料調査の成果は、2019 年 9 月 29 日に東京で開催されたロシア史研究会大会において発表し、発表原稿を改稿したものを『ロシア史研究』に投稿した。さらに、雑誌『クリオ』には「ウクライナ・キエフの文書館と図書館」と題した文章を寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究計画であった①先行研究の整理、②国内外での史料調査、③学会発表・論文投稿について、それぞれ当初の計画通り、一部はそれ以上の進展が見られ、研究はおおむね順調に進展したといえる。 ①については、専門領域の先行研究の整理と批判的検討を行い、その成果を用い、学会発表や投稿論文において、自身の研究を研究史のなかに位置付けた。 ②については、約5か月間キエフに滞在し、充実した史料調査を行うことができた。とりわけ、1918年に新興国家ウクライナ人民共和国においてロシア人、ポーランド人、ユダヤ人について導入された民族属人自治の実践過程と、それに伴う非ウクライナ人の政治的地位の変化について、多くの史料を収集し、学会での発表に用いることができた。 ③については、第一に、国際的な専門誌Kritikaに論文の掲載が決定したことが挙げられる。さらに、今年度投稿した邦語論文一本が査読を通過し、既に刊行された『ロシア東欧研究』にも査読論文が掲載された。また、国内学会で一回報告を行うとともに、ウクライナの研究者の報告について英語でのコメンテーターをつとめた。これは当初の予定以上の進展であり、①先行研究の整理と②史料調査の成果を、学会や雑誌での公開へと円滑につなげることに成功したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、①先行研究の整理、②史料調査、③学会発表と論文投稿を行っていく。そして、今年度と同様、①と②の成果を、すみやかに、かつ研究史的に意義のある議論とともに、学会や雑誌といった場所で公開していくことを目標とする。 ①については、引き続き、常に更新される最新の研究動向をフォローするとともに、ウクライナやロシアの専門誌など、手が届きにくい媒体の研究を積極的に探してゆく。 ②については、長期休暇などを利用し、ウクライナ及びロシアでの現地史料調査を行う予定である。 ③については、令和元年度と同様に、学会報告で研究者からのフィードバックをうけ、論文投稿につなげていく。
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Research Products
(4 results)