2018 Fiscal Year Annual Research Report
ノメイガ類におけるHybrid Type性フェロモンの普遍性と進化様式
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18J22206
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
松井 悠樹 鳥取大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ノメイガ / Hybrid type / タイプII性フェロモン / 分子系統解析 / Patania |
Outline of Annual Research Achievements |
野外調査により収集したノメイガ類65種の累代飼育法を確立し、このうち19種について研究遂行に十分な量の性フェロモンと個体数を確保できたため、性フェロモンのカラム分画~生物検定に供試した。結果は当初の予想とは異なり、供試したほぼ全ての種がタイプI画分に対して応答を示し、タイプIとタイプIIを混ぜたときのみ応答を示す種(=Hybrid type)は見出されなかった。特に、ウコンノメイガおよびミナミウコンノメイガはタイプI性フェロモン成分が同定されているにも関わらず、合成品を用いた野外試験では十分に雄を誘引できていないことから、タイプII成分を性フェロモンとして利用している可能性が考えられたため重点的に分析を行った。しかし、室内で行った生物検定においてはタイプI画分のみに対しても応答を示したことから、これら2種がタイプII成分を性フェロモンとして利用している(=Hybrid type)可能性は否定された。これらの結果より、ノメイガ類におけるHybrid Typeは、限られた種のみが持つ派生した形質である可能性が浮上した。 野外調査により220種について分子系統解析に必要な新鮮なサンプルを収集し、ほぼ全てのサンプルについてミトコンドリアCOI領域全長(1531bp)を増幅する反応条件を確立するとともに、この領域を用いた予備的な解析を行った。ノメイガ類全体では塩基置換が飽和に達しており、解像度の高い系統樹は得られなかったものの、ノメイガ類の中でも多種を擁する一群であるPatania属が多系統である可能性が示されたほか、オオキバラ・コヨツメノメイガのそれぞれに近縁な隠蔽種が存在することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、当初の予定を上回る19種のノメイガ類について性フェロモン利用形態の分析を行い、全ての種がタイプI画分に対して応答を示す(=Hybrid typeではない)ことを明らかにした。この結果はHybrid Typeがノメイガ類において派生的な形質である可能性を示唆するものである。 一方で、分子系統解析では、Patania属が多系統である可能性、オオキバラ・コヨツメノメイガのそれぞれに近縁な隠蔽種が存在することが示されたものの、ノメイガ類全体について解像度の高い系統樹を得ることはできなかった。このことから、進捗状況は当初の予定よりやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年に引き続き、抽出した性フェロモンのカラム分画~生物検定を行い、性フェロモン利用形態の分析を進める。特に、昨年時点で分析が進んでいるOstriniaおよびPatania属、Hybrid Typeの種が含まれるAnania属の種について重点的に分析を進める。 ミトコンドリアCOI領域を用いた分子系統解析では塩基置換が飽和しており明瞭な系統樹が得られなかったため、核遺伝子やMIG-seqによる解析を検討する。
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Research Products
(1 results)