2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J22211
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大畑 耕治 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ベッドフォーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は(1)密度流ベッドフォームの形成実験,および(2)開水路ベッドフォームの定義の再検討,を行った. 深海で発生する密度流は,陸上の河川と同様に,流れの底面にベッドフォームを形成する.ベッドフォームの形成条件は地層から古環境を復元するための手がかりとして用いることができる.しかし,既存研究で求められたベッドフォームの形成条件は,すべて自由水面を持つ開水路(河川)での実験や観測に基づいている.開水路の流れと密度流では水理学的挙動に違いがあるため,開水路での形成条件をそのまま密度流に適用できる保証はない.すなわち,密度流堆積物の堆積構造を研究するためには,密度流の観測データに基づいたベッドフォーム安定領域図を新たに作成することが必要である.そこで,密度流ベッドフォームの形成条件を求めるため,塩水を用いた水槽実験を行った.水を張った水槽内にアクリル製の水路を設置し,塩水を水路内に流入させることで密度流を再現する.塩水濃度や水路の傾斜などの水理条件を変え,複数回水槽実験を行った.ベッドフォームが形成したときの水理条件のデータを収集・解析し,形成されるベッドフォームの形状と水理条件との関係を求めた.また,既存の密度流実験と開水路ベッドフォームの観測結果を収集し,開水路と密度流におけるベッドフォームの形成条件の違いを検討した.形成条件比較の際には,流れの水理条件を示す無次元パラメーターを用いた.さらに,平成30年度は開水路ベッドフォームの定義の再検討を行い,その予察的な結果を国際学会(American Geophysical Union Fall Meeting)にて発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度に行った密度流実験の結果に加え,既存の密度流実験と開水路ベッドフォームの観測結果を収集し,開水路と密度流におけるベッドフォームの形成条件の違いを検討した.形成条件比較の際には,流れの水理条件を示す無次元パラメーターを用いた.結果として,以下のことが明らかになった.(1)本実験の結果は,既存の密度流実験の結果と整合的であった.そして,(2)実験条件を表すパラメーターとして層平均値を用いた場合は,密度流ベッドフォームの安定領域は開水路ベッドフォームの安定領域とは大きく異なっていた,一方,(3)下層平均値を用いて実験条件を表した場合は,密度流ベッドフォームの安定領域は開水路ベッドフォームの安定領域とよく一致した.このことは,開水路と異なり密度流の場合は流れ全体ではなく下層のみがベッドフォームの形成に影響しているかもしれないことを示している.すなわち,開水路ベッドフォームの安定領域図を密度流堆積物に適用した場合,復元された水理条件は密度流の下層の状態を表している可能性がある. 従来の解釈では,十分な検証もなしに,密度流ベッドフォームの形成条件は開水路と同じとみなされてきたが,本研究の実験結果はこれを否定するものであった.さらに,開水路と同様の速度構造を示しているのは密度流の下層部のみであるため,この下層部の水理条件に着目すれば開水路とほぼ同じ無次元水理条件でベッドフォームができていることも明らかになった.これらの成果は博士課程のメインテーマである混濁流の2層浅水流モデルの開発,および混濁流ベッドフォーム形成プロセスの解明に繋がるものである.
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Strategy for Future Research Activity |
現時点の結果として,密度流下層の水理条件を示すパラメーターを用いた場合に,密度流ベッドフォームの形成条件が開水路ベッドフォームの形成条件とよい一致を示すということが明らかになった.今後の方針として挙げられるのは,(1)安定領域図に用いる無次元数の見直し,および(2)密度流の二層流浅水方程式モデルを開発すること,の二点が挙げられる.まず(1)については,先行研究において開水路の水理条件を示す無次元数を含め,最適な無次元数を模索することで,密度流ベッドフォームの安定領域を十分に記述できると考えられる.(2)については,日本地球惑星科学連合2018年大会での成果発表を踏まえ,引き続き数値モデル開発に取り組んでいく. 成果の公表については,本研究での実験結果を,実験実施の際に滞在した研究グループの成果報告会にて発表し,有意義なコメントを頂くことができた.また,報告会以降の成果や進捗を,2019年9月に開催されるInternational Association of Sedimentologists(国際学会,ローマ)で発表する予定である.また,研究成果をまとめた論文を英文国際誌へ投稿するべく,研究指導者と議論を重ねながら原稿を執筆している.
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Research Products
(3 results)