2018 Fiscal Year Annual Research Report
子宮内幹細胞移植を用いたウールリッヒ型筋ジストロフィーの胎児治療法の開発
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18J22274
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
原田 文 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 胎児治療 / 間葉系幹細胞 / 新生児移植 / 筋ジストロフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ウールリッヒ型筋ジストロフィー(UCMD)モデルマウスへのヒトiPS由来間葉系間質細胞(iMSCs)移植治療を行い、その全身性治療効果および作用機序を検証することである。 UCMDは、6型コラーゲン(COL6)関連筋疾患の最重症型であり、骨格筋において筋再生を制御するCOL6が欠損することが原因で発症する。iMSCがCOL6を細胞外に分泌することから、この実験系ではドナーiMSCsの移植後の動態を組織内におけるCOL6の発現によって追跡できる。先行研究では、骨形成不全症など一部の遺伝性疾患に対する胎児治療としての子宮内間葉系幹細胞移植の治療効果が示されてきたが、ドナー細胞の長期的な組織への生着が十分に示されずその作用機序が明らかにされてこなかった。今研究において、移植後のMSCの動態およびその作用機序を明らかにすることができれば、胎児期および新生児期の細胞移植治療の有効性を支持する根拠となるとともに、筋疾患への胎児治療への道筋をつけることができる。 昨年度までに、我々は新生児期に腹腔内投与を行ったiMSCsが、大腿四頭筋などの骨格筋内へ移動し局所にてCOL6を発現すること、および移植治療により骨格筋組織において筋径が太くなり筋再生がより活性化する像をとらえることができた。また長期的効果として、iMSCsの投与を4週ごとにくりかえすとこれらのCOL6の発現が骨格筋組織内で持続的に観察されること、20週時の運動機能試験では移植治療群において一部に運動機能の改善を認めることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腹腔内に投与したMSCが骨格筋に遊走し、骨格筋組織内の局所でCOL6の発現を確認できたことは、MSCが血流を介して組織間を移動したことを意味し(実際に新生児期の静脈投与でも同様の結果を確認した)移植後のiMSCの動態の一部が明らかになった。(成果1) さらに、移植したドナー細胞自体は4週以内にそのほとんどが骨格筋組織からいなくなることを確認し、移植細胞の生着の確認だけでは移植治療効果の作用機序をあきらかにできないことを確信した。そして移植細胞から外分泌される成分からアプローチし作用機序を明らかにしていくという今後の研究方針をもつことができた。(成果2) また腹腔内移植の骨格筋における治療効果についても、骨格筋の筋線維径の増大、(UCMDモデルマウスでは週齢が進むと筋線維数が減少するが)筋線維数減少を軽減するなどといった組織学的改善、運動機能の改善などその概ねを示すことができた。(成果3)
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は主にiMSC移植治療の作用機序のさらなる解明をめざす。具体的には骨格筋の筋再生の促進や筋線維のアポトーシスを抑制などを考えているが、骨格筋組織に対するiMSCs移植の作用点について明らかにする。さらに、UCMDモデルマウスにおいて治療効果がCOL6の補充により実現されたのかどうかについて、COL6を発現するこれまでの実験に用いてきたiMSCsとCOL6を発現しないCOL6a1KO-iMSC細胞のそれぞれの移植実験を行い、治療効果を比較検討する。 UCMDモデルマウスへのiMSCs投与による呼吸筋への治療効果判定として、呼吸機能検査を外部検査機関に受託する形で計画している。 さらに、iMSCsがヒト生体検体から分離培養したその他のMSCs(今回は羊水幹細胞)にまさる有用性を有するかどうか、骨格筋組織への遊走能、局所でのCOL6発現量、幹細胞としての増殖能などについて比較検討する。羊水幹細胞との比較実験は、予定より実験がおくれているが、進捗状況としては、ヒト検体の研究使用について必要な倫理委員会での審査が平成31年度の3月に終了したところである。
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Research Products
(3 results)