2018 Fiscal Year Annual Research Report
生体内の血液循環を模擬した灌流バイオリアクタによるヒト立体心筋組織構築の挑戦
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18J22398
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| Research Institution | Waseda University |
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戸部 友輔 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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| Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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| Keywords | バイオリアクター / 血管床 / 脱細胞 / 細胞シート |
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| Outline of Annual Research Achievements |
生体外において細胞から臓器特有の機能を有する立体組織を構築する技術の研究開発は国内外で広く行われており、新たな移植治療や新規薬剤開発のための薬剤スクリーニングモデルとしての応用が期待されている。本研究では生体外でミリメートルオーダーの立体心筋組織を構築するための最適な灌流培養条件を明らかにする。流路付きの培養土台である血管床利用することにより、立体組織内の血管網への培養液の灌流が可能となる。心筋細胞シートを複数枚積層することで作製した立体心筋組織内の毛細血管網へ培養液を安定的に灌流可能なシステムを構築し、灌流培養手法の検討を行うことを目的とした。
平成30年度では血管床内の流路と細胞シート内の血管網を結合させる手法の開発に着手した。本研究では脱細胞化したブタ小腸を血管床として選定し、血管床に対する細胞浸潤性を向上させるための酵素処理手法の検討，更にはガス加圧を用いた新規灌流培養系の構築を行った。双方の流路間の結合には，血管床上に積層した細胞シートから血管床流路まで細胞が浸潤することが求められる。タンパク分解酵素に血管床を浸漬する時間を検討し、血管床の機能を維持したまま細胞浸潤性を向上させる最適な処理条件を見出した。また、酵素処理後の小腸血管床上での細胞シートの灌流培養により流路間を結合させるには、細胞シートが小腸に密着し、かつ血管床の末梢まで培養液の循環が必要であると考えた。密閉したボックス内をガスで加圧した状態で灌流培養を行うことで、上記を同時に達成可能である新たな灌流培養系を実現した。構築した培養系を用いて2週間の灌流培養を行った後に血管床の流路から粒径1 μmの蛍光粒子を灌流した結果、蛍光粒子が細胞シート内の血管網に沿っている様子を認めた。以上より、新規灌流培養手法、および酵素処理手法は流路間の結合を達成するために有効であることを明らかにした。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、生体外での立体心筋組織構築に寄与し得る灌流培養条件の検討、および新規灌流培養系の開発を目的としている。本年度は、複数種の細胞を共培養することで細胞シート内に構築した血管網へ培養液を灌流するための技術の開発に着手した。微細な流路を有する培養の土台である血管床上で細胞シートを灌流培養することで、血管床内の流路を介して直径数十マイクロメートルの血管網への培養液を灌流する。酵素を用いた生化学的アプローチ、および周期的なガス加圧を用いた新規灌流培養系の構築による工学的アプローチの双方により、血管床内の流路と細胞シートの血管網間での流路結合の達成が可能であることを明らかにした。本年度の研究により、従来の手法では困難であった脱細胞化ブタ小腸血管床を用いた組織内血管網への培養液の灌流が可能となり、移植可能な立体組織構築手法として有効な灌流培養条件の検討が次年度から着手可能となった。また本研究により生体外での立体組織の灌流培養において末梢循環を向上させる手法のひとつを明らかにした。これは組織の生存や機能維持に重要であり、生体外での立体組織の灌流培養手法としても寄与しうるものであると考える。次年度以降に検討する、立体組織の血管系に対する灌流培養手法に加えて、本年度に構築したガス加圧を用いた培養系を組み合わせることにより、生体外でミリメートルオーダーの立体心筋組織を構築に挑戦する。
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| Strategy for Future Research Activity |
次年度は以下の２つに着手する。
1.定常流を用いた立体心筋組織構築
細胞シート内に付与した直径数十マイクロメートルの血管網に対して培養液を灌流するシステムを本年度までに構築した。次年度は上記のシステムを用いて、血管網を付与した心筋細胞シート数枚ずつを１組として段階的に積層することにより立体心筋組織を構築する。その際定常流を用いて組織内の血管網に培養液を供給する。培養液の流量等の灌流条件と、その際に培養液が灌流される血管構造の領域、および灌流培養によって構築される立体心筋組織の厚みの関係性を明らかにする。
2.末梢循環を向上させる灌流バイオリアクタの構築
本研究では、末梢循環の向上がミリメートルオーダーの立体組織の構築に必要ではないかという仮説の元、生体外での灌流培養方法として生体内の血液循環である拍動流に着目した。そこで次年度は、ガス加圧を加えた状態で組織を安定的に、かつ長期間灌流培養可能なバイオリアクタを構築し、さらに本バイオリアクタに拍動流を実装することによって、定常流を用いた灌流培養に比べて末梢循環の向上が可能な灌流バイオリアクタを構築する。新規バイオリアクタを用いた灌流培養が、組織末梢での培養液の供給領域に与える影響を蛍光イメージングにより定量化し、定常流を用いた灌流培養時との領域の大きさの違いを明らかにする。また、本バイオリアクタを用いて立体組織構築を行い、構築可能な立体組織の厚みを定量化する。これにより、末梢循環の向上が生体外における立体組織構築に与える影響を、構築される立体組織の厚みの観点から明らかにし、立体心筋組織構築に必要な灌流培養条件を見出すことを目的とする。
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Research Products
(4 results)
