2019 Fiscal Year Annual Research Report
急性骨髄性白血病細胞が獲得するチロシンキナーゼ阻害剤耐性化機序の解明
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18J22436
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Research Institution | Juntendo University |
Research Fellow |
山谷 琴子 順天堂大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 急性骨髄性白血病 / FLT3 遺伝子変異 / 抗アポトーシス因子 / 薬剤耐性 / CAGE |
Outline of Annual Research Achievements |
急性骨髄性白血病(AML)では、受容体型チロシンキナーゼFms-Like Tyrosine Kinase 3 (FLT3) の恒常的活性化をもたらすFLT3遺伝子変異が知られている。特にFLT3-ITD (Internal Tandem Duplication)遺伝子変異は、AMLの予後不良マーカーであるとともに重要な治療標的である。FLT3変異受容体をターゲットとしたチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)が一定の治療効果を示すが、FLT3キナーゼ領域の点突然遺伝子変異が高頻度に発生して治療抵抗性が生じることが明らかになり、この獲得耐性の克服が課題となっている。本研究ではTKI抵抗性を示すAML細胞のゲノムワイドな変化を解析し、耐性に関与する因子を特定して新たな治療戦略を提案することを目的とする。 トランスクリプトーム解析であるCAGE(Cap Analysis of Gene Expression)解析を実施し、FLT3遺伝子の付加的変異の有無によって変化するゲノムワイドな変化を検出し薬剤耐性に関わる因子の特定を試みた。使用した検体は、AML患者サンプル(26検体)とBa/F3細胞株(マウス由来)で、TKI感受性を示す細胞群と抵抗性を示す細胞群をそれぞれ比較検証した。その結果、TKI抵抗性の細胞では、抗アポトーシスに関連する遺伝子が有意に亢進していた。特に患者サンプル群ではBCL2A1の発現の上昇を認めた。さらに、TKI暴露によって耐性を獲得したヒト白血病細胞(MV4;11細胞株)を使用し、抗アポトーシス因子の発現レベルを検証したところ、TKI耐性細胞では同様にBCL2A1の発現が亢進していた。BCL2A1が今後新たな治療ターゲットになる可能性が示唆されたが、BCL2A1を特異的に阻害する薬剤は開発段階である。そこで、我々は代替として阻害剤AがBCL2A1の発現上昇を伴うTKI耐性白血病細胞に有効である可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CAGE解析により、FLT3遺伝子の付加的変異を獲得したFLT3-ITD/D835重複変異細胞(TKI耐性細胞)では抗アポトーシス関連遺伝子、特にAML患者サンプルではBCL2A1の発現上昇を認めた。我々はより患者サンプルを再現したモデルであるヒト白血病細胞(MV4;11細胞株)を用いて、抗アポトーシス遺伝子の発現変動を検証した。元来よりFLT3-ITD変異を有しているMV4;11細胞株を、TKIの一つであるキザルチニブの暴露により遺伝子変異を誘導し、キザルチニブ耐性となったFLT3-ITD/D835重複変異株を使用した。FLT3-ITD単独変異(TKI感受性細胞)と比較しFLT3-ITD/D835重複変異株では、RNA及び蛋白レベルでBCL2A1の発現が有意に亢進していることを示した。抗アポトーシス因子は薬剤耐性に大きく関与することが明らかとなっており、BCL2をターゲットとしたベネトクラックスが臨床応用されつつある。興味深いことに、治療抵抗性となるFLT3-ITD/D835重複変異細胞ではTKIに加えベネトクラックスの感受性もFLT3/ITD単独細胞と比較し低下することを本研究で明らかにした。BCL2A1が今後新たな治療ターゲットになる可能性を考え、我々はBCL2A1の発現低下を誘導する薬剤Aの有効性を見出した。 以上の結果から、本年度は概ね予定通りの達成度が得られたと考えられる。また、これまでの研究結果を、学会発表を通じて、成果を発信できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、BCL2A1がもたらす薬剤耐性をより明確にする予定である。MV4;11 FLT3-ITD/D835重複変異細胞にBCL2A1のノックダウンもしくはノックアウトを行い、TKIやベネトクラックスの薬剤感受性の変化を検証予定である。また、MV4;11 FLT3-ITD変異細胞にBCL2A1を過剰発現させ、TKIやベネトクラックスの薬剤感受性の変化も追加予定である。2020年度はこれらの結果をまとめ、論文投稿を予定している。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] GAGE Transcriptome analysis reveals BCL2A1 uregulation in FLT3-ITD/D835 dual mutated AML cells harboring complex co-mutaions2019
Author(s)
Kotoko Yamatani, Yoko Tabe,Tomohiko Ai, Kaori Saitoh, Haeun Yang,Koya Suzuki,Atsushi Hori1, Yuko Murakami-Tonami, Weiguo Zhang, Bing Carter, Sonoko Kinjo, Kazuho Ikeo, Kazuhiro Katayama, Yoshikazu Sugimoto, Takashi Miida, Neil P. Shah, Marina Konopleva, Yoshihide Hayashizaki, Michael Andreeff,
Organizer
62st ASH Annual meeting and exposition
Int'l Joint Research
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[Presentation] CAGE transcriptome identified Bcl-2 as a novel molecular target of FLT3-ITD AML with acquired TKD mutation2019
Author(s)
Kotoko Yamatani, Yoko Tabe, Kaori Saito, Haeun Yang, Weiguo Zhang, Sonoko Kinjo, Kazuho Ikeo, Bogumil Kaczkowski, Takashi Miida, Marina Konopleva, Yoshihide Hayashizaki, Michael Andreeff
Organizer
The annual Global Academic Programs (GAP) Conference 2019
Int'l Joint Research
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