2019 Fiscal Year Annual Research Report
電気化学反応の精密制御による電鋳プロセスの高精度化
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18J23036
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
山口 豪太 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 超精密加工 / 電鋳 / めっき / X線ミラー |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的な電鋳法の形状転写精度は1マイクロメートル程度といわれている。しかしながら、電鋳法の最先端のアプリケーションであるX線光学素子などの超高精度部品の作製では、形状誤差を100ナノメートル以下に抑えなければ実用的な製品を得ることができない。この背景から、本研究では電鋳法の高精度化とX線光学素子への応用について研究を進めてきた。 第一年度の研究では、電鋳法の電析条件が形状転写精度に与える影響について、ロッドレンズを母型に用いた実験により調査した。この知見を活かし、第二年度では電鋳法の高精度化を進めた。最終的に、適切な電析条件を用いることで、従来法と比較して1桁以上高い数十ナノメートルオーダの転写精度を得ることに成功した。 X線光学素子には、形状精度のみならず微視的な表面平滑性(表面粗さ)も要求される。原子レベルに平滑なガラス基板を母型に用いて、電析条件と表面粗さ・皮膜の結晶構造との関係を調査した結果、電鋳製品の表面粗さが電析膜のミクロな結晶構造に支配され、数オングストロームオーダの原子レベルの平滑性を得るために結晶粒径の制御が不可欠であることが明らかになった。本成果を国際学術誌にまとめ発表した。 さらに、高精度化した電鋳プロセスの応用として、軟X線集光ミラーの作製とその集光性能の評価を行った。作製した軟X線集光ミラーの集光性能を評価した結果、軟X線のサブミクロン集光を確認した。今後、本ミラーを用いた高空間分解能な軟X線顕微観察への応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、電鋳法の高精度化とX線回転体ミラー作製への応用を目的に研究を行っている。第一年度では電析条件が転写面粗さ・形状転写精度に与える影響を定量的に明らかにした。第二年度では、第一年度の研究で得られた知見を活かし、電鋳法の高精度化を進めた結果、従来法と比較して1桁以上高い数十ナノメートルオーダの転写精度を得ることに成功した。さらに、基礎研究にとどまらず、X線自由電子レーザー(XFEL)施設であるSACLAにおいて実際に作製したミラーの光学性能を評価し開発したプロセスの優位性を示すなど、期待以上の成果があった。
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Strategy for Future Research Activity |
形状誤差を10ナノメートル以下に抑えることで回折限界性能を有するX線ミラーが実現することから、電鋳プロセスのさらなる精度向上が求められている。電鋳プロセスにおける形状誤差の生成のメカニズムについては、未だ不明な点が多い。このメカニズムを解明することで、電鋳プロセスのさらなる精度向上が期待できる。今後の研究では、電析条件と形状誤差の詳細な関係を実験的に明らかにするとともに、電析槽の構造や電析膜厚の不均一性が形状誤差に与える影響を有限要素法による電析反応シミュレーションを用いて解析することで、形状誤差生成のメカニズムを明らかにしていく。
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Research Products
(3 results)