2018 Fiscal Year Annual Research Report
高浸透圧下でNFAT5制御に関わるNotchシグナルの活性化機構とその役割の解明
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18J23145
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
立野 浩輝 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 浸透圧ストレス / NFAT5 / ゲノムワイドスクリーニング / Notchシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はNFAT5の高浸透圧依存的な核内移行という表現系に注目したゲノムワイドsiRNAスクリーニングにより高浸透圧ストレス応答におけるNotchシグナルの関与を見出し、「高浸透圧ストレス応答におけるNFAT5 制御機構としてのNotch シグナル経路の分子機構とその役割の解明」を目的に遂行している。 これまでにスクリーニングに続く解析の結果、Notchシグナル関連遺伝子HES1がNFAT5の高浸透圧依存的な核内移行の制御のみならず、高浸透圧環境において細胞保護的な役割を有していることが明らかとなっていた。当該年度はHES1の発現抑制がNFAT5による浸透圧応答遺伝子の発現に対して与える影響を検討した。その結果、HES1がNFAT5の高浸透圧依存的な核内移行の制御のみならず、NFAT5下流の浸透圧ストレス応答遺伝子の発現誘導に対しても必要であることが示唆された。 また、高浸透圧環境におけるNotchシグナル活性化の指標のひとつとしてのHES1の高浸透圧依存的な発現誘導のメカニズムを明らかにした。当初想定していたCanonicalなNotchシグナルを介したものではなかったが、この誘導メカニズムの一部が明らかになったことで高浸透圧環境におけるNotchシグナル活性化の分子基盤の全容解明に近づいたと考えられる。さらに、この高浸透圧環境におけるHES1の発現レベルの上昇の生物学的意味の解明にも取り組み、HES1の細胞内発現レベルの上昇がNFAT5の高浸透圧ストレス応答について増強効果を示すことも明らかとなった。以上のように、本研究の大きな目標である「高浸透圧ストレス応答におけるNFAT5 制御機構としてのNotch シグナル経路の分子機構とその役割の解明」に対して一定の進捗を生み出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標である「高浸透圧ストレス応答におけるNFAT5 制御機構としてのNotch シグナル経路の分子機構とその役割の解明」の中でもひとつのテーマである「高浸透圧ストレスによるNotchシグナルの活性化メカニズムの解明」について大きな前進があった。高浸透圧環境におけるNotchシグナル活性化の指標のひとつとしてのHES1の高浸透圧依存的な発現誘導のメカニズムが、ERKシグナルを介したnon-canonicalなNotchシグナルによるものであることが明らかとなった。当初想定していたcanonicalなNotchシグナルを介したものではなかったが、この誘導メカニズムの一部が明らかになったことで高浸透圧環境におけるNotchシグナル活性化の分子基盤の全容解明に近づいたと考えられる。さらに、HES1の発現レベルの上昇がNFAT5の高浸透圧ストレス応答に対して増強効果を示すことも明らかにできており、高浸透圧環境において発現誘導されるHES1の役割についても少しずつ知見が得られている。 また、NFAT5シグナルとNotchシグナルの高浸透圧環境におけるクロストークを浸透圧ストレス応答のみならず、免疫応答の分野に拡充する研究についても少しずつ着手できている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、これまでにNotchシグナル関連遺伝子HES1がNFAT5の核内移行や下流遺伝子の転写発現といった浸透圧ストレス応答に必要であること、ならびにHES1の発現レベルの上昇がNFAT5による浸透圧ストレス応答を増強することが明らかとなっている。しかしながら、HES1によるNFAT5の発現制御メカニズムについては不明であり、今後の解析により解明していく必要がある。そこで、NFAT5とHES1が共に転写因子である点から遺伝子プロモーター上での相互作用に注目した解析を進めようと考えている。具体的にはHES1の発現レベルの変化に応じて、NFAT5の下流遺伝子のプロモーターに対する結合性が変化するかについてChIPアッセイを用いた検討を行いたいと考えている。その結果に応じて、ChIP-seqを用いた網羅的な解析についても行うことも考えている。 また、NFAT5シグナルとNotchシグナルの高浸透圧環境におけるクロストークを浸透圧ストレス応答のみならず、免疫応答の分野に拡充するため、免疫細胞を用いた検討を本格的に進めていく計画である。具体的にはマウスのマクロファージ様細胞およびヒト単球由来細胞を用いて高浸透圧環境における免疫応答を検討する実験系の構築、さらにその免疫応答に対するHES1の関与を検討していくことを考えている。
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Research Products
(1 results)