2018 Fiscal Year Annual Research Report
オンチップ集積された光ナノ共振器系における動的制御に基づく光操作
Project/Area Number |
18J23217
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
仲代 匡宏 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | フォトニック結晶 / 光ナノ共振器 / 共振器結合系 / 光回路 / 光電子集積化 / p-i-n構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
フォトニック結晶共振器は非常に微小な領域に長時間光を閉じ込められるため,光のままでの情報処理を可能にする技術として期待されている.本研究では,共振器中に閉じ込めた光の性質を動的に制御することで可能となる光操作の発展を目指して,電気的な制御による多彩な光操作について研究を行なっている.これまでに電気的な制御機構の導入によって可能となる共振波長の周期的な変調を利用した光制御について理論的な検討を行い,これを用いて共振器間の結合の強度と位相を動的に制御できるということを定式化してきた.特に結合位相の制御を用いれば,時間反転対称性を破ることができるため,磁場を用いない非相反的な光操作などの高度な光操作が可能になる.一方このような光操作を行うには,十分な時間共振器に光を保持しておく必要があるが,共振器単体の性能は年々向上しており,光閉じ込めの性能指数であるQ値として1100万という非常に高い値が達成されている.しかしながら電気的制御機構を導入した共振器のQ値は数10万程度に留まっており,上述のような高度な光制御を可能にするためにはQ値の向上が必須といえる.そこで従来の超高Q値単一共振器作製プロセスを継承しつつ,電気的な制御において必要となるpn領域や金属配線の導入を,光学性能を劣化させることなく行うための新たなプロセスを開発に取り組んだ.その結果,共振器Q値は数十万から数百万にまで向上した.また,このような共振器Q値の共振器結合系で実際に光操作が可能となることを数値計算によって明らかにした上で構造設計を行ない,基礎特性の評価を行なった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高い光学性能と電気的制御機構を両立するフォトニック結晶デバイスの作製プロセスに着手した結果,光閉じ込め性能であるQ値が従来の数十万から数百万にまで向上した.この閉じ込め性能は他の研究グループのデバイスに比べて100倍程度高く,従来では実現が困難であった新たな光操作を実証できると期待される.実際に,共振器に閉じ込めた光を別の共振器に転送する操作について,現実の実験における種々の損失などを考慮した数値計算を行ない,実験を可能とするようなパラメーターを発見できている.現在設計した構造を作製し評価を進めている. 作製プロセスの改善にあたって電極材料の変更を強いられたなど,当初想定しなかった多数の課題を解決する必要があった.また,Q値の向上にともなって測定系の改善も必要になったのでそのため当初の研究計画に完全に沿っているわけではないが,これを機会に更なる特性向上に役立つようなプロセス,及びより安定的に測定できる系の構築についての知見も得られたので,今後の実験の基礎的な部分を習得したといえ,概ね順調な研究進捗であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,高速制御に必要な p-i-n接合を導入した共振器及び共振器結合系も作製しており,基礎特性の評価を進めている.一方で動的光操作実証に向けた測定系構築も進めており,これらを経て,まずは断熱的な光転送の実証を行っていく.それに付随して,正弦波状の変調について,有限要素法による電極パターンの最適化や回路設計などを行いつつ,ネットワークアナライザーを用いた基礎特性評価を行っていく.また,電気的制御機構の導入によって可能となる大規模集積化に向けて,多数の共振器からなる共振器結合系における光操作について現時点で得られた着想を更に深化させていく.
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