2019 Fiscal Year Annual Research Report
肝臓の慢性疾患におけるインターロイキン‐19による新規免疫連関の解明
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18J23232
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Research Fellow |
藤本 泰之 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | IL-19 / 肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性肝疾患モデルにおけるIL-19の病態生理学的機能の解析を目的とし、コンカナバリン(ConA)誘発性肝障害モデルを用いて、野生型(WT)およびIL-19遺伝子欠損マウス(IL-19KO)における肝炎病態の比較検討を行った。前年度までに検討したLPS/ GalN誘発性肝障害モデルは、自然免疫系の活性化を介して、肝障害を誘発する。一方で、今年度に検討したConA誘発性肝障害モデルでは、T細胞を活性化することで肝障害が誘導される。病態形成機序の異なる急性肝障害モデルを用いて、比較解析することで、急性肝障害におけるIL-19の機能を明らかにすることを目的とした。Balb/c背景の野生型およびIL-19KOマウスに、生理食塩水に溶かしたConA(5 mg/kg B.W.)を尾静注により投与することで急性肝障害を惹起した。投与12時間後に採血および肝臓組織を採材した。肝障害の血中マーカーであるAST値およびALT値を測定した。肝臓組織を用いてパラフィン切片を作成し、HE染色により肝障害の程度を組織学的に評価した。ConAの投与により、肝障害の血中マーカーであるASTおよびALTの上昇が認められた。また、HE染色を用いた組織学的な評価においても、肝細胞の壊死を伴う炎症性細胞浸潤が認められたことから、ConA誘発性急性肝障害モデルが確立できたことを確認した。この急性肝障害モデルを用いてWTおよびIL-19KOにおける病態を比較検討したところ、IL-19KOではWTと比較し肝障害マーカーであるAST値およびALT値に有意な差は認められなかった。また組織学的な評価においても、肝細胞障害および肝細胞の壊死病変部への炎症性細胞浸潤の程度は同程度であった。以上のことからIL-19は発症機序の異なる肝障害モデルにおいて、異なる役割をはたす可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、前年度、LPS/D-galactosamine(GalN)誘発性肝障害モデルによる研究成果を踏まえて、IL-19の肝障害における役割をさらに追求するために、別の発症機序を有する肝障害モデルを用いて解析を進展させた。その結果、コンカナバリン誘発性肝障害モデルを用いたところ、IL-19遺伝子欠損に伴う肝障害の明確な著変は観察されなかった。この結果のみであれば、ネガティブデータとなるところであるが、前年度の成果を併せて考察すると、IL-19の肝臓における役割には細胞選択性があることを明らかにすることができたことは研究の進展であると捉えることが可能である。これらin vivo実験系での研究成果に加えて、初代培養肝細胞を用いたin vitro実験系も確認することができた。以上のことから、当該の評価が妥当であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
自然免疫系の活性化を介するLPS/GalN誘発性肝障害モデルにおいて、IL-19遺伝子欠損マウスでは、WTと比較して、肝障害の抑制が認められた。その一方で、T細胞の活性化を介して肝炎を誘導するConA誘発性急性肝障害モデルでは、WTおよびIL-19KOにおいて肝障害の程度に差は認められなかった。以上のことから、IL-19は急性肝障害においては自然免疫系の活性化を介して肝障害の増悪化に寄与する可能性が考えられる。さらに、初代培養肝細胞を用いた実験により、IL-19はSTAT3の活性化を誘導しないことを確認済みであり、IL-19は少なくとも肝細胞に対する直接的な作用を介してではなく、クッパー細胞等の自然免疫系の活性化を介して肝障害の増悪化に関与することが示唆された。今後の展望として、クッパー細胞におけるIL-19の作用のより詳細な検討を行う予定である。また前年度までに用いたBalb/c系マウスは、C57BL/6系マウスと比較して、Th2応答の誘導能が高いことから、アレルギー疾患モデルの解析に広く用いられる。IL-19と皮膚の炎症関連疾患における先行研究では、C57BL/6系マウスが用いられている。IL-19遺伝子欠損マウスは、遺伝子背景により異なる表現型を示すと考えられることから、Balb/c系マウスと比較してTh1応答が有意であるC57BL/6背景のIL-19遺伝子欠損マウスを用いてLPS/GalN誘発性肝炎モデルの病態の比較検討を行う。
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