2018 Fiscal Year Annual Research Report
抗がん活性を有する超分子の創製と次世代型抗がん剤としての応用
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18J23366
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
森田 健太郎 熊本大学, 熊本大学大学院薬学教育部医療薬学専攻, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 超分子 / ポリカテナン / シクロデキストリン / DDS |
Outline of Annual Research Achievements |
天然のβ-シクロデキストリン(β-CyD)を環状分子として用い、ポリカテナンの調製を試みた。軸分子にはチオール化ポリエチレングリコール(PEG)-ポリプロピレングリコール(PPG)-ポリエチレングリコール共重合体(PEG-PPG-PEG)を用いた。様々な実験条件検討の結果、収率 11%でβ-CyDポリカテナンの調製に成功した。調製の確認を行うため、NMRおよびゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)を用いて生成物の構造解析を行った。得られたピークから組成分析を行った結果、ポリカテナン1分子あたり約14個のCyDを含有することが示唆された。次に、β-CyDポリカテナンに直接、官能基を修飾する手法を試みた。しかしながら、ジスルフィド結合が反応中に解離するため、官能基化が難しいことが示唆された。したがって、私はジスルフィド結合ではなく、化学的に安定なアミド結合を選択し、ポリカテナンの調製を行った。様々な実験の末、軸分子にアミノ化PEG-PPG-PEGを、リンカーとして酸クロリドを用いることにより、アミド結合を介したポリカテナンの調製に成功した。NMRおよびGPCの結果より、1分子あたり約10個のCyDを含有するポリカテナンの生成が示唆された(収率:3.8%)。次に、得られたCyDポリカテナンに対して官能基の付与を行った。官能基として、静電的相互作用によりタンパク質や薬物と相互作用可能である、アミノ基およびカルボキシル基を選択し、調製を試みた。アミノ化剤としてエチレンジアミンを、カルボキシル化剤として無水コハク酸を反応させた結果、それぞれの官能基修飾体CyDポリカテナンが得られた。NMRおよびGPCの結果からも生成が強く示唆された。本研究結果は、官能基化CyDポリカテナンを新規生体素材として用いるための可能性を示した重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天然のβ-シクロデキストリン(β-CyD)を環状分子として用い、ポリカテナンの調製を試みた。軸分子にはチオール化ポリエチレングリコール(PEG)-ポリプロピレングリコール(PPG)-ポリエチレングリコール共重合体(PEG-PPG-PEG)を用いた。調製したチオール化PEG-PPG-PEGとβ-CyDを水中で反応させ、ポリ擬ロタキサンを形成した。さらに、還元剤を添加し環化反応を促進させ、CyDポリカテナンを調製した。調製の確認を行うため、NMRおよびゲル浸透クロマトグラフィー (GPC)を用いて、構造解析を行った。得られたピークから組成分析を行った結果、ポリカテナン1分子あたり約14個のCyDを含有することが示唆された。次に、化学的に安定な結合である、アミド結合を介してβ-CyDポリカテナンの調製を行った。軸分子として、アミノ化PEG-PPG-PEGを調製し、β-CyDとポリ擬ロタキサンを形成させ、リンカーとして酸クロリドを反応させることで、ポリカテナンの調製に成功した。NMRの結果より、1分子あたり約10個のCyDを含有するポリカテナンの生成が示唆された(収率:3.8%)。次に、得られたCyDポリカテナンに対して官能基の付与を行った。官能基として、静電的相互作用によりタンパク質や薬物と相互作用可能である、アミノ基およびカルボキシル基を選択し、調製を試みた。アミノ化剤としてエチレンジアミンを、カルボキシル化剤として無水コハク酸を反応させた結果、それぞれの官能基修飾体CyDポリカテナンが得られた。今回、調製したCyDポリカテナンはタンパク質や薬物と静電的に相互作用することにより、デリバリーの為のキャリアとしての能力を有すると推察される。今後、in vivoにおける体内動態に関する検討およびin vitroにおける細胞内取り込みや細胞内動態について検討予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
CyDポリカテナンのデリバリーキャリアとしての有用性について検討し、新規生体素材としての有用性について可能性を探求する。今回、調製したCyDポリカテナン誘導体はタンパク質性薬物と静電的に相互作用することにより、デリバリーの為のキャリアとしての能力を有すると推察される。したがって、次年度においては、得られたポリカテナンについて、モデルタンパク質性薬物と複合体を形成させ、in vivoにおけるマウスでの体内動態に関する検討およびin vitroにおける細胞内取り込みや共焦点顕微鏡を用いた細胞内動態について検討予定である。具体的には、ゼータサイザーを用いて、粒子径やζ-電位の変化から相互作用の有無について検討を行う。さらに、NMRを用いて、詳細な構造解析を行う予定である。得られた複合体形成条件を基に、in vivoにおいてラットを用いて、複合体の有効性について検討を行う。この際、コントロールとしてリニア型の類似化合物である、CyDポリロタキサンおよびタンパク質性薬物単独を用いる。コントロールと比較してCyDポリカテナンの環状構造に由来した有効性を得ることを目標とする。 また、アミド結合β-CyD ポリカテナンに対し、メチル基の修飾を行うことで、メチル化-β-CyDポリカテナンの調製および評価も並行して行う予定である。当研究室においてメチル化-β-CyDが抗がん活性を有することを報告していることから、メチル化-β-CyDポリカテナンを調製することで超分子構造の有する可能性について探求する。調製が成功した場合、同様に構造解析を行い、in vitroにおける細胞障害活性をWST-8法を用いて行う予定である。この際、細胞種にはマウス大腸がん由来細胞株(Colon-26細胞)やヒト口腔類表皮がん由来KB細胞を用いる。また、細胞取り込み、細胞内動態等を明らかにすることを目標とする。
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