2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J23369
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
岡 亮平 鳥取大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 無機顔料 / 環境調和型 / 赤色 / 黒色遮熱顔料 / アルカリ土類金属 / 複合酸化物 / 日射反射率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、環境や人体に対して一切無害であり、かつ、塗料、セラミックス、プラスチックなどといった幅広い用途に適した新規な優環境型の黒色遮熱、赤色無機顔料を創製し、得られた顔料の発色機構や近赤外反射機構の解明を目指した。 平成30年度は、高い赤色度を示す新規な優環境型無機顔料の開発を目指し、無害な元素のみから構成されるCa14Al10Zn6O35を母体材料に選択し、発色源としてFe3+イオンを固溶させた試料を合成した。その結果、Ca14(Al0.85Fe0.15)10Zn6O35において、最も高い赤色度(CIEL*a*b*表色系においてa* = +14.6)が得られ、試料は鮮やかな橙色を呈し、市販橙色顔料を遥かに凌ぐ耐熱性を有することを明らかにした(Chem. Lett., 2018, 47, 1522)。加えて、Bi2O3を母材に、Bi3+サイトをTa5+イオンで部分置換した(Bi1-xTax)2O3+2xを合成した。その結果、正方晶型の(Bi0.97Ta0.03)2O3.06において、最大の赤色度(同表色系においてa* = +17.3)が得られ、鮮やかな橙色を呈した(ACS Omega, in press)。 黒色遮熱無機顔料については、前年度までに開発したCa2Mn0.85Ti0.15O4顔料に、Zn2+をさらに固溶させたCa2Mn0.80Ti0.15Zn0.05O3.95が十分な黒色度と高い日射反射率(JIS K 5602規格で75%)を示し、Ca2Mn0.85Ti0.15O4(日射反射率74%)と比較して、日射反射率を下げることなく、より純粋な黒色を呈した。また、Ca2Mn0.80Ti0.15Zn0.05O3.95は、市販の黒色遮熱顔料よりも濃い黒色を呈しながらも、市販顔料を凌ぐ日射反射率(市販顔料は最大でも50%)を有することを明らかにした(論文執筆中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度(1年目)は、高い赤色度を示す新規な優環境型無機顔料の開発を目指し、無害な元素のみから構成されるCa14Al10Zn6O35及びBi2O3を母体材料に選択した。Ca14Al10Zn6O35に発色源としてFe3+イオンを固溶させることで、試料は橙色を呈し、市販橙色顔料を凌ぐ耐熱性を有する新規な無機顔料の開発に成功した。さらに、Bi2O3にBi3+よりもイオン半径の小さいTa5+を固溶させることで、Ca14(Al0.85Fe0.15)10Zn6O35よりも鮮やかな橙色を呈する無機顔料を実現した。 黒色遮熱無機顔料については、前年度までに開発したCa2Mn0.85Ti0.15O4顔料にZn2+イオンをさらに固溶させることで、日射反射率を下げることなく、黒色度が向上し、市販の黒色遮熱顔料よりも濃い黒色を呈しながらも、市販顔料を凌ぐ日射反射率を有する黒色遮熱顔料の開発に成功した。 上記のように、赤色無機顔料については、赤色の発色には至っていないものの、開発顔料は鮮やかな橙色を呈している。今後、開発顔料の構成元素とイオン半径の異なるイオンを固溶させ、格子サイズを拡大あるいは縮小させることで、結晶場やバンド構造が変化し、赤色度が大きくなることが期待される。黒色遮熱顔料については、すでに市販顔料を凌ぐ日射反射率を有する黒色遮熱顔料を実現している。これらを踏まえ、「(2)おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成30年度(1年目)の研究によって開発した顔料の発色機構を詳細に検討し、さらに高い彩度及び日射反射率を有する新規な無機顔料の開発を目指す。具体的には、まず、開発顔料について、結晶構造や電子構造などが色彩、遮熱性能に及ぼすメカニズムを解明する。各顔料の粉末X線回折測定の結果をもとに、リートベルト解析を行うことで、各顔料の結晶構造を精密化する。さらに、密度汎関数法を用いたバンド構造計算を取り入れることで、結晶構造、電子構造と色彩、遮熱性能の関連性を明らかにする。また、合成した顔料の粒子径や粒子形状とその色彩との関係も明らかにする。 1年目の研究と同様に、既存の顔料の単なる改良ではなく、新しい母体材料の探索を行い、得られた知見を新規無機顔料の合成にフィードバックすることで、色純度(原色性)及び近赤外線反射能を向上させ、より鮮やかな色彩及び日射反射率を有する優環境型無機顔料を創製する。
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