2018 Fiscal Year Annual Research Report
アレルギー性接触皮膚炎における感作性物質の新規抗原性獲得機構に関する研究
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18J23393
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
白石 絵里奈 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ハプテン / アレルギー / MUP1 / FITC / 皮膚感作性 |
Outline of Annual Research Achievements |
MUP1と代表的な感作性物質数種類との結合性を、MUP1の既知のリガンドを用いた競合阻害試験を行うことで検討した。その結果、極強度感作性物質である2,4-dinitrochlorobenzene (DNCB), FITC及び中等度感作性物質である2-mercaptobenzothiazole (MBT),軽度感作性物質であるα-hexyl cinnamaldehyde (HCA), CitralがMUP1と結合することが明らかとなった。その一方で、極強度感作性物質のbenzo(a)pyren, 強度感作性物質のBenzoyl peroxide、軽度感作性物質のcinnamyl alcohol,中等度感作性物質のフタル酸無水物はMUP1と結合しないことが明らかとなった。 以上の結果から、MUP1とハプテンとの結合性は既に報告されている感作性物質の感作強度と一致しないことが明らかとなった。これは申請書での仮説と一致しており、MUP1が既知のハプテンとタンパク質との結合様式であるリシン・システインを介した共有結合とは異なる結合様式でハプテンと結合する可能性がより強められた。 in vivoにおけるMUP1の関与を検討するために、結合性が確認されたハプテンの1つであるFluorescein-4-isothiocyanate (FITC)を用いて、MUP1を高発現しているトランスジェニック(TG)マウスにおけるFITCの抗原提示細胞(APC)活性化能を検討した。皮膚にFITCを塗布し、所属リンパ節における活性化樹状細胞(CD11c+細胞)について検討したところ、FITCの蛍光をもつCD11c+細胞の数がTGマウスにおいて有意に高いことが明らかとなった。 以上の結果から、MUP1がハプテンと結合しキャリアタンパク質としてAPCへの抗原提示及び所属リンパ節への移行を促進する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずはMUP1タンパク質と代表的なハプテンとの結合性について、既知リガンドであるN-フェニル-1-ナフチルアミン(NPN)を用いた競合阻害実験により評価したところ、MUP1タンパク質は代表的なハプテンと結合することを明らかにした。またその結合強度は、既に報告されている各ハプテンの感作強度に依存せず、MUP1とハプテンとの結合性にはMUP1特有の結合スペクトルが存在することも明らかにした。 さらに、結合性が確認されたハプテンの1つであるFITCを用いて、樹状細胞の抗原取り込み能と所属リンパ節への移行性を評価したところ、野生型マウスに比べ、全身でMUP1を高発現しているTGマウスでは、FITCの取り込み量および所属リンパ節への移行性が増加しており、MUP1がin vivoにおいても一部のハプテンの抗原提示促進に関わっていることを明らかにした。 以上より、平成30年度は概ね期待通りの研究成果が得られたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、前年度で検討したMUP1の感作性物質への結合性とAPCに対する活性化作用が、皮膚感作成立にまで影響を与えているのかを明らかにするために、MUP1トランスジェニックマウス(TGマウス)を用いて以下の2点を検討する。MUP1結合性および非結合性の感作性物質に対する感受性を局所リンパ節試験(LLNA)により評価し、野生型マウスとの感受性の違いを比較検討する。またこの際の抗原特異的T細胞の誘導性を評価するために、リンパ節細胞を回収し、in vitroで感作性物質による再刺激を行った際の増殖性を指標に比較検討する。増殖性の評価は、3H-チミジン取り込み試験により評価する。 令和2年度は、皮膚感作成立過程におけるMUP1の作用点を明らかにする。TGマウスは全身でMUP1を高発現しているため、前年度の検討においてMUP1が皮膚感作性や抗原特異的T細胞も誘導に影響を及ぼしていたとしても、作用部位の特定はできない。そこで当初の仮説を確認するためにDC2.4を用いた細胞移植実験を行う。具体的には、in vitroにおいてMUP1および感作性物質を処理したDC2.4、またはMUP1高発現DC2.4を準備し、これを野生型マウスに移植免疫して感作性の評価を行う。感作性は、マウスから取り出したT細胞の抗原特異的な増殖を、3H-チミジン取り込み試験により評価する。
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