2019 Fiscal Year Annual Research Report
アレルギー性接触皮膚炎における感作性物質の新規抗原性獲得機構に関する研究
Project/Area Number |
18J23393
|
Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
白石 絵里奈 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | ハプテン / アレルギー / MUP1 / レンチウイルスベクター / 皮膚感作性 |
Outline of Annual Research Achievements |
MUP1タンパク質を全身で過剰発現した雌性MUP1-TGマウスを用いて、皮膚感作の感受性にMUP1が与える影響を検討した。感作性物質として、MUP1との結合性が確認された極強度感作性物質である2,4-dinitrochlorobenzene (DNCB) 及び軽度感作性物質であるcinnamyl alcohol (HCA) を用いて、OECD TG に収載されている皮膚感作性試験の確定試験であるLocal Lymph Node Assay (LLNA) 法で比較を行った。その結果MUP1-TGマウスでは野生型マウスに比べ、皮膚感作によるリンパ球細胞の増殖の指標である3H-チミジン取り込み量の有意な増加が見られたことから、MUP1-TGマウスではDNCBに対する皮膚感作の感受性が増強する可能性が示された。 また、感作性物質の抗原性獲得段階にMUP1が与える影響を評価するために、マウス樹状細胞株(DC2.4細胞)にMUP1を高発現する細胞株の作成を試みている。当該年度は、MUP1高発現プラスミドの遺伝子コンストラクトの設計及び構築を行った。pLVSIN-CMV Pur VectorのCMVプロモーター配列を除去し、CAGプロモーター配列を組み込んだ。さらにCAGプロモーター制御下にMUP1遺伝子、puromycin耐性遺伝子、EGFP遺伝子を組み込みそれぞれの遺伝子間をp2A peptide配列でつないだ。p2A peptide配列でつなぐことによりp2A配列の前後の遺伝子の発現量が同等となり、MUP1の発現をEGFPの蛍光で追跡できるとともに、puromycinでセレクションを行うことも可能となることが期待できる。今後は、構築したプラスミドを用いて、実際にDC2.4細胞にレンチウイルスベクターを用いて感染させることでMUP1高発現DC2.4細胞の作成を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにMUP1タンパク質が種々の感作性物質と結合することが明らかにしてきた。このことから申請書で述べた、MUP1タンパク質がキャリアタンパク質として働くことで抗原性を獲得するという仮説が強められた。そこで当該年度は、MUP1タンパク質を全身で過剰発現したMUP1-TGマウスを用いて、皮膚感作の感受性にMUP1が与える影響を検討した。感作性物質としてMUP1との結合性が確認された極強度感作性物質である2,4-dinitrochlorobenzene (DNCB) 及び軽度感作性物質であるcinnamyl alcohol (HCA) を用いて、OECD TG に収載されている皮膚感作性試験の確定試験であるLocal Lymph Node Assay (LLNA) 法で比較を行った。その結果MUP1-TGマウスでは野生型マウスに比べ、皮膚感作によるリンパ球細胞の増殖の指標である3H-チミジン取り込み量の優位な増加が見られたことから、MUP1-TGマウスではDNCBに対する皮膚感作の感受性が増強する可能性が示された。 また、感作性物質の抗原性獲得段階にMUP1が与える影響を評価するために、マウス樹状細胞株(DC2.4細胞)にMUP1を高発現する細胞株の作成を試みており、必要なプラスミドの準備を既に完了している。 以上より、令和元年度は概ね期待通りの研究成果が得られたと評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度はMUP1のキャリア分子としての作用点を明らかにするため、以下に示す2つの実験を計画している。 ①キャリアタンパク質としての機能の核心である抗原取り込み段階におけるMUP1の寄与を確認する。評価には、マウス樹状細胞株(DC2.4)の細胞表面分子の発現上昇を指標にしたin vitroの感作性評価系を利用する。(申請書「2. 現在までの研究状況」参照)。DC2.4は抗原を取り込むと成熟DCへと分化し細胞表面分子の発現を上昇するため、もしMUP1がキャリアタンパク質として働いていれば、MUP1の有無によりDC2.4細胞の表面分子の発現に違いが表れる。本検討では、「DC2.4細胞にMUP1タンパク質と感作性物質を細胞の外から処理した場合」、また「レンチウィルスベクターを用いてDC2.4細胞の細胞内にMUP1を安定的に高発現させた細胞株を用いた場合」で評価し、MUP1が樹状細胞の内または外のどちらに存在することが重要なのか、その作用点について検討する。 ② 皮膚感作性に対するMUP1の作用点を確定するために移植実験を行う。in vitroでMUP1と各感作性物質を処理し、抗原提示細胞に分化させたDC2.4細胞を野生型マウスに移植免疫することで、MUP1の抗原性獲得に影響とその後の感作性への影響について検討を行う。具体的には、移植免疫後にリンパ節細胞を取り出し、3H-チミジンを用いた抗原特異的リンパ球増殖試験を行う。今回用いるDC2.4細胞はC57BL/6マウス由来の樹立された細胞株であるため、移植実験には同種であるC57BL/6マウスを用いる。C57BL/6マウスはLLNAにおいて正確に評価できないことが確認されているため、3H-チミジン取り込み試験により評価する。
|