2019 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト現象学と言語行為論に基づいたコミュニケーションロボットの倫理に関する研究
Project/Area Number |
18J23409
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水上 拓哉 東京大学, 学際情報学府, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | ロボット倫理学 / コミュニケーションロボット / 道徳的行為者 / 媒介理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、コミュニケーションロボットの倫理を考える上で要となる「道徳的行為者性(moral agency)」という概念が、ロボットのもたらす経験に応じてどのようにして拡張される(ない)べきかを中心に考察を進めた。 現在、技術倫理において最も注目されている理論のひとつである「媒介理論」においては、技術的人工物の道徳的次元を捉えるために、普通は人間にあるとされる道徳的行為者性概念を技術にまで拡張することが試みられている。技術と人間をハイブリッドな存在として捉えて行為者性概念を再解釈するこのアプローチは、責任帰属の問題を考えるときには混乱をもたらしてしまう。しかし、ソーシャルロボットな役割をもつコミュニケーションロボットを考察する上では、ユーザ側の想像力を分析射程に入れる必要があるため、このような「関係論的転回」の要素は何らかの形で取り入れなければならないだろう。道徳的行為者性を拡張しないことで責任帰属の混乱を回避しつつ、同時に関係論的視野を採用してコミュニケーションロボットの道徳的重要性を説明できる枠組みを提示することは決して不可能ではないように思われる。来年度はこの点について、コミュニケーションロボットの経験をフィクション論に接続させることで説明することを試みる。 本年度は、以上の点について口頭発表と論文投稿を行った。今年投稿した論文は3本で(うち招待論文1, 査読付論文2)、すべて掲載が決まっている。また、そのうち一部の内容については11月に行われた科学技術社会論学会にて口頭発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では3年で博士論文として研究成果をまとめることを予定していたが、来年度内での完成は難しいかもしれない。しかし、個別具体的な先行研究の整理や考察は予定通り進展しており、論文投稿にも繋がっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は博士論文として成果をまとめるフェーズに入るため、これまでの考察を論文化する作業が中心になると思われる。まず年度初めに博士論文の章立てを確定した上で一次審査(予備審査)に合格することを目標とする。その後、それぞれの章を完成させ、余力があれば部分的に学術論文として関係する学会に投稿していく。
|